まみ めも

つむじまがりといわれます

物しか書けなかった物書き

ちょっと前に実家から送られてきた荷物の中に、大根と白菜が入っていた。実家の裏で畑をしていたじんさのじいちゃんが丹精したものだという。「じんさのじいちゃん」と屋号で呼ばれていたので、本当のところの名前がわからない。知っていたのかもしれないが思い出せない。そのじんさのじいちゃんはこのあいだ亡くなって、この野菜はじいちゃんから畑を引き継いでばあちゃんが収穫した。来年はもう畑はやらないだろうという話。白菜はまわりから葉っぱをはいでいって、いま、鍋を二回やった。
ふとんからぼくのにおいが消えたときほんとの意味で訪れる死後 /岡野大嗣
という歌ではないけれど、じんさのじいちゃんの本当の死後はまだ来ていない、大事に大事に食べる、白菜。

物しか書けなかった物書き(KAWADE MYSTERY)

物しか書けなかった物書き(KAWADE MYSTERY)

ト。

タイプしたものが物質化する怪現象に遭遇したアル中気味のシナリオライター、帰宅途中に死体にヒッチハイクされた男…。不条理なまでのナンセンス・ユーモアと巧みなストーリーテリングを味わえるクセ球作家の短篇集。
おきまりの捜査 p7-17 清野 泉
階段はこわい p19-34 清野 泉
そこは空気も澄んで p35-48 清野 泉
物しか書けなかった物書き p49-66 小鷹 信光
拳銃つかい p67-84 清野 泉
支払い期日が過ぎて p85-104 山本 光伸
家の中の馬 p105-130 山本 光伸
いやしい街を… p131-158 山本 光伸
ハリウッド万歳 p159-190 山本 光伸
墓場から出て p191-222 谷崎 由依
予定変更 p223-249 山本 光伸
犯罪の傑作 p251-277 山本 光伸
八百長 p279-299 小梨 直
オーハイで朝食を p301-337 谷崎 由依
ロバート・トゥーイのおかしなおかしなおかしな世界 p339-354 法月倫太郎

どういうわけで予約したんだったか、ロバート・トゥーイ。オフビートとナンセンスが炸裂して、小気味よい短編集。ショートショートしていない星新一、とおもったら、表紙の馬の絵が和田誠で、いかにもしっくりする。