つわりに似た胃もたれがしばらく前からあって、どうやら花粉症の症状であるらしい。吐かないだけつわりよりましだと思っていたら、午後になってたまらない感じがこみあげてきて、トイレですこし戻してしまった。朝から一歩も屋外に出ないでこれなのだから、マスクをする意味があるのかよくわからない。肌も心も荒んできた。乗り換え駅の花屋は、開店のタイミングが合っているだけではだめで、鼻の詰まり具合や陳列されている花の種類でにおう日もあるし、におわない日もある。
- 作者: 最果タヒ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/10/26
- メディア: 単行本
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詩人・小説家の最果タヒが贈る、初のエッセイ集。「友達はいらない」「作りましょうましょうましょう」など、自身のブログ等から厳選した45本を収録する。
思い出に残る言い訳に「バスが豆腐の角に頭をぶつけたので遅れる」というのがある。待ち合わせに時間通りにきたことのない相手だったので、待ち合わせより一時間早い時間を伝えておいたので痛くもかゆくもなかったけれど、それでも万が一早く来たときに気の毒だと思って、一時間前についてぶらぶらとデパートの中で水槽を泳ぐ魚を眺めていたりした。待ち合わせを守れないのは相手の時間を大切にできないからだとなにかの本で読んだけれど、たしかに人の気持ちや時間を振りまわすひとで、振りまわされることによろこんでいられるうちはよかったけれど、このごろは自分に余裕がないので気持ちがすりきれそうになることもある。