まみ めも

つむじまがりといわれます

野良猫を尊敬した日

グループホームにいるばあちゃんに会ってきた。おもやのばあちゃんはぼそぼそと小さな声で話してちっともことばが聞き取れない、なにを言っているかわからないというと途方に暮れたように笑う。いつの話かわからない、どこかの誰かの着物の柄の話をしているらしい。そののばあちゃんは声はしっかりしているけれども同じことを何度でも繰り返してきく。ふたりとも、なにをどこまでわかっているのか知れないで、それでも色つやよく表情が穏やかなのでほっとした。帰りぎわ、そっと手に触れてみる。この思いがけずにすべすべとした感触をずっと取っておきたいけれどどんどんなくしていってしまう。

野良猫を尊敬した日

野良猫を尊敬した日

ト。

肝が小さい、がんばれない、自意識の暴走が止められない。心の弱さは、どこまでいっても克服できないものなのか。大人になっても未だ世界とうまく折り合えない日常をユーモアを込めて描くエッセイ集。
天職の世界の人々
カエル王子の恋
ケーキ殺し
片思い
シンジケート
自分に忠告
人間のピーク
記憶壺
未来人
きっぱりできない
カモは二度毟られる
部屋
微差への拘り
言葉の完成度
肝のサイズ
常識の変化
できない人
写真の謎
他人の感覚
庶民的呪縛
ムラがある
男の幻滅ポイント
少数派
逃げ出すライン
ひとんち
静かな幸福
ババロア
心の物差し
広いお風呂がいいかなあ
敬語を使ってはいけない
痛いところ
鼠の顔
云えない
夢の水曜日
百葉箱の謎
何もない青春
お菓子の話
未来になって判明したこと
どうしても書きたいこと
それぞれの世界の限界
神様
めんどくさくて
不審者に似た人
お金持ちを想像する
お金の使い道
自分と他人
人生の予習
現実
心の弱さ
日本の幅
いつもの世界
我が家の法律
野良猫を尊敬した日
行動パターン
会社の思い出
会社を辞めた時の話
トイレの夢
見分けられない
ハイレベルな友人
がんばれない
時間を味方にする方法
流星とチーかま

穂村弘のスケールのみごとなまでの小ささにものすごく共感してしまう。穂村弘の短歌もエッセイも、ふつうの人がふつうに感じることをふつうの言葉で記しているのに、ふつうにふつうにふつうなところがふつうでない。川本三郎はふつうの言葉でふつうでないことをいいたいと書いていたけれど穂村弘はふつうの言葉でふつうのことを言う。そのふつうっぷりにほっとする。どこまでもふつうの範疇から逃れられない凡庸な自分は嫌いではない。自分なくしの旅ではないけれど、できるだけ目立たず埋もれていたい。