駅前の青物屋には毎年桃の季節になると「押さないで 桃がいたいと 泣いてるよ」という八百屋オリジナルの五七五が貼り出される。桃の絵に顔が描かれて、目からはぽたぽたと涙が流れている。今年もあるなと思っていたら、そのうち仲間のプラム三兄弟が貼り出され、「押さないで プラムもいたいと 泣いてるよ」ときたもんだ。桃とプラムの違いは、桃は赤、プラムは青で縁取りが描かれていて、桃はひとつ、プラムはみっつ、みっつのうちのふたつは涙を流しひとつは目を釣り上げて怒っているらしい。いたいよーというセリフつき。こういう洗練からはほど遠い貼り紙がなんだかとても好きで、いつもほのぼのしてしまう。お店の人はほのぼのという気分ではないだろうけれども。
- 作者: 目黒考二
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/02/20
- メディア: Kindle版
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本はエサ。本がなければ生きられない活字中毒者でありながら、父の死に際して本が何の救済にもならなかったことを吐露する筆者。読書の達人が真の姿を明かす超ブックガイド&エッセイ。
うしろめたさを覚えながら本を読むことをやめられない悲痛さが滲んで、ちょっとひとごとではいられない。本を読んでいてもなんの役にも立たないことだってあるということを、目黒考二にいわれてしまったらもう本当にそうとしか思えない、やばい。