胃もたれは花粉症の入り口だけで、今度は鼻の中の液状化現象と肌あれがはじまった。大丈夫だった洋服がちくちくいりいりしだして、おまえもか、という気持ちになる。色ちがいのワンピースで、軍隊で使う毛布のような質感が気に入っているもう十年ものの毛玉だらけのぼろいやつ、それでもまだまだ気に入って着ているけれど、黒は大丈夫なのに茶色はちくちくするのはよくわからない。ワンピースはなにも考えずに一枚着るだけで済むのが楽でいい。理想はキキのワンピース。黒いシンプルなワンピースが五着ぐらいだけあるようなクローゼットに憧れる。オソノさんがいうように、黒は女をうつくしく見せるのかどうかは知らないけれど、なかなかこれはというシンプルなものはかえって見つからない。装飾や個性はいらないけれどポケットがほしい。マーガレットハウエルの洋服に対する信頼の半分以上はシンプルでポケットがあるというところによっている気がする。
- 作者: 武田百合子,武田花
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/03/21
- メディア: 単行本
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没後25年を前に明らかになる、たぐいまれなる文章家・武田百合子の全貌。中央公論社刊「武田百合子全作品」全7巻に未収録の100余りのエッセイを収めた作品集。略年譜、作品リストも収録。
武田泰淳が百合子に日記を書くことをすすめたときのことばがいい。
「どんな風につけてもいい。何も書くことがなかったら、その日に買ったものと天気だけでもいい。面白かったことやしたことがあったら書けばいい。日記の中で述懐や反省はしなくてもいい。反省の似合わない女なんだから。反省するときゃ、必ずずるいことを考えているんだからな。百合子が俺にしゃべったり、よくひとりごと言ってるだろ。あんな調子でいいんだ。自分が書き易いやり方で書けばいいんだ」
反省するときゃ、必ずずるいことを考えているんだからな、なんていわれたらドッキーンとしちゃうな。ずるいことを考えてしまったことを反省したら、ずるずるとずるさが引き出されて、どこまでもずるくなってしまうので反省はしないでずるいことだけ考えよう。あれ?