実家に来た日に食べた刺身がねっとりと甘かった。ぶり、ひらめ、いか、まぐろ。きょうは北陸の冬には珍しく青空で、犬の散歩に出た日暮れどき、白山がのぞいて、帰り道には下弦の月と宵の明星で、夕焼けがぎりぎりの低さまで見える空の広さに、深い夜更の予感までグラデーションがあり、たんぼにうつる景色の奥行きに泣きたくなるような郷愁と、でもどこにも巻き戻しのきく過去のないことが、かなしいような、ほっとするような。今夜はこどもたちが大根びきしてきた源助大根をふろふきにしてもらい、柚子味噌で。一年前の冬は安房直子「ふろふき大根のゆうべ」を読んだらたまらなくなって、ふろふき大根をくるみ味噌で食べたのを思い出す。あとは、大好物の金時豆の甘煮をつくってもらった。
ト。
空を蹴る p7-32
雨をわたる p33-58
鳥を運ぶ p59-84
パセリと温泉 p85-110
マザコン p111-134
ふたり暮らし p135-165
クライ、ベイビイ、クライ p167-197
初恋ツアー p199-225
どの母と子の像にも自分がちらちらして、つらい。
おとうさんは、はっきり言ってマザコンだった。好きな食べものをきくと、かきもちと言っていたのが、一度、すまこ(ばあちゃん)が口の中で柔らかくしてくれたたくわん、と漏らしたことがあって、母となった中年の娘が耳にする発言としてはかなりゲロゲロものだったのだけれど、甘ったれた本音だったと思う。自分はといえば、マザコンでもありファザコンでもあり、兄妹にも学歴にも容姿にもとにかく自分というものに果てしないコンプレックスがあることに気付いてしまう。