まみ めも

つむじまがりといわれます

死ぬまでに行きたい海

保育園のお迎えにでるときにぽつぽつと地面を水玉にしていた雨がさーっと降りはじめて洋服をしっとり濡らす。雨具の支度がないので濡れるのをおかまいなしに、ぴちぴちちゃぷちゃぷを歌いながら三人で歩いていたら、黄色い雨合羽をはおったふくちゃんが遊歩道の先から歩いてきて傘を二本さしだしてくれた。なんだかものすごくはしゃいでしまい、お母ちゃんなんだなあということを、母になって11年も経つというのにしみじみと思った。ふくちゃん、これは日傘だよ。雨が降ると金木犀のにおいが濃くなる。

ト。

焚火の思い出、猫の行方、魅かれる山…。出不精を自認する著者が、それでも気になるあれこれに誘われ、気の向くままに出かけて綴った、新しくてどこか懐かしい見聞録。全22篇を収録する。『MONKEY』連載を単行本化。

しぬまでにいきたい、と頭の中で文字を読むと、行きたいと生きたいが交差してバグったみたいになる。現と夢のあわいで確実に本当のツボを押す岸本佐知子