まみ めも

つむじまがりといわれます

アブサン物語

アブサン物語
夏季休暇は、ふつかめより息子がみるみる発熱し、茶も牛乳も受け付けなくなり、途方に暮れるうちに全身に発疹があらわれ、クリニックにいったところ手足口病との診断であった。いまは平熱に復し落屑を待つばかりなのだが、いかにも掻痒感をともなうらしく夜もおちおち眠れずぐずぐずやるのでほとほと参った次第。きょうは痒み止めの軟膏を処方してもらったので風呂上がりに全身に塗ったくった。わたしもなんだか疲れ果ててしまい、夏休みはろくに本も読まなかった。
アブサン物語は、ブックオフで毎度の105円で、猫の表紙は和田誠氏のイラストで、いかにも脱力感をかもしている。ランチ本に携行。中身もやっぱり脱力していて、俺が屈折してるんじゃない、屈折してるのが俺なんだ、なんて意味があるようなないような理屈をこねている村松氏がかわいらしい。猫のアブサンにむけられる愛情も脱力しているくせにまじめで、猫が好きでないひとたちに、じぶんの伴侶であるアブサンが悪い印象を及ぼさないように、なんてことを気遣ったりする。じぶんの大事なものが、他人にとって不快になってほしくないっていうのは、すごくわかる気がする。あと、猫は人目に付くところで死なないというなかば伝説めいた話があるけれども、その答えもこの本には載っていて、猫は死ぬんじゃなくて、木曽の山中に修行に出るのであって、修行をおえた猫はステージがあがって別人ならぬ別猫になるから、もとの飼い主にはおいそれとわからんらしい。このエピソードも、人間側が勝手にこさえたもんだろうけれどすごくいいとおもった。嘘くささに溢れていて変に溺れてない感じがいい。アブサンは木曽の山中にはいかないで死ぬわけだけれど、やっぱりそこはさみしくって、会社のデスクですこし鼻がぐしゅぐしゅした。それが夏休みの前日だった。夏休みがこんなことになるとは思いもよらなかったが、おわってしまえばこれでよかったような気もする。会社も休まずにすんだし、だらだらと息子に乳を吸われながらクーラーのきいた室で寝そべる夏も悪くなかったと思おう。