まみ めも

つむじまがりといわれます

いまどきの老人

となりの家のおばあさんは、脚が悪いらしくふだんは滅多に顔を見ないが、ここのところ、すこし日和のよい午前中なんかは杖をついて家の前にでてきて、猫とひなたぼっこをしていたりする。通りすがりに挨拶をすると、ごめんね、目が悪いから気づかなくてと断ってから、あかちゃんの顔をみせてというのでしばらく立ち話。緑内障がひどく、手術もできないという話をきいて、合点したが、おばあさん、髪は真っ白にふわふわして、目は湖面のような色に澄んで、もこもこと着込み、たんぽぽの綿毛が一斉にとんでいる光景みたいな、みたことないが懐かしいようなちょっとしたファンタジーだ。きれいだなあ、でもなんか悪いなあとおもいながら、吸い込まれるみたいな眼球をチラ見してしまう。そのふたつの眼球のなかにいるだろうふたつのわたし。

いまどきの老人

いまどきの老人

おばあちゃんと猫たち/シャーリー・ジャクソン
プール・ピープル/アリソン・ルーリー
リバイバルジュリアン・バーンズ
You Must Relax!/ジョアンナ・スコット
紳士のC/バジェット・パウエル
ミスター・イヴニング/ジェームズ・パーディ
ハムナイフであんたたちのお父さんを刺したのは私じゃありませんよ/エレン・カリー
冬のショパンスチュアート・ダイベック
柴田元幸編のアンソロジーブックオフの105円棚から。赤子の寝ているとなりで老人の本を読みふける中年の図。あとがきで、「異人」としての老人、その老いをダシにして面白い小説を集めたと書いてあるとおり、ひとすじ縄ではいかない老人が次々登場して、すんごいおもしろかった。ちいさいころ、ばーちゃんの握ったおにぎりが異常においしくて、掌からなんかやばいもの(ハッピーターンのハピ粉に準ずる類の)がでとるにちがいないと思っとったが、やっぱりじーさんばーさんからはとても良い出汁がとれるのだとわかった。人生の苦味だとか、酸いも甘いもだとか、そういうもんではなくて、なにかといわれると、やっぱりファンタジーというひと言になるかもしれない。表紙の写真はサビーヌ・ヴァイス。