ミスター・アーサー

夏に髪の毛をとことん短くした。こんな感じで、と参考にみせた写真は畏れ多くも木村カエラちゃんの写真だった。まさかカエラちゃんにはならんだろうと思ってはいたが、案の定で、なでしこジャパンの守護神海堀あゆみさんのようになった。しかし帰宅してみると宿六の感触はすこぶる良好で、贔屓の女優の髪型と近いのだという。わたしはその女優の名を知らなかった。

ミスター・アーサー [VHS]

女優の名前はライザ・ミネリで、その出演している映画はミスター・アーサーというのだが、いかんせんDVDになっておらず、VHSしかない。鎌倉の家ではVHSを再生できるというんで、律儀に奴さんが借りてきた。三十日の晩に再生。

ニューヨークの大富豪の御曹司のアーサー・バックは何不自由なく遊び回る毎日を送っていたが、あるとき父親から政略結婚を命じられ、逆らえば遺産を相続させないと告げられた。遺産が欲しいアーサーは観念して結婚しようとするが、街で出会ったリンダと恋に落ちてしまう。

という、王道をいくシンデレラ・ストーリーだが、主人公のダドリー・ムーアは小男でアルコールに溺れナンセンスなギャグをとばしたうえにひとりで爆笑することですべて回収する器のちいさな男、ライザ・ミネリはというと父親へのプレゼントにネクタイを万引きしたり平気で嘘をつくような女、ホテルの部屋にはジオラマの電車が走っていたり、突然「ピーナッツ！！」と叫んでみたり、とにかくくだらないことを満載しながら恋愛特急は走っていく。とにかくみているほうは肩の力を抜いてみかんを剥きながらぷっと笑ったりぷっとおならをこいたりしとればよいという至極簡単な娯楽映画なのだった。物語のさいご、富豪のおばあちゃんに、あんた、財産はいらないのね！？と聞かれたアーサーが、リンダに、「君、ツナサンド作れる？」ってきくとこがよかった。ツナサンドなら、火もいらんし、洗い物もすくないし、手も汚れんし。好きな男にはイエスと言えばいいし、好きでない男には、そんぐらい自分でやればと言ってやればいい。