まみ めも

つむじまがりといわれます

作家の自伝 (79) 澁澤龍彦

夏休みは恒例の下田行。昨日は朝の五時前に起き出し、着替えだけを済ませてまとめてあった荷物をレンタカーに積み込んで浦和を出た。途中何度かざんざん降りをくぐり抜け、大風のせいかスイスイ流れる道を十時前に河津まできてしまった。さすがにホテルにも入れないので熱川のバナナワニ園をまわることにした。金網や水槽のむこうで微動だにしない佇まい。金網は一枚で、そのくせ、ワニの動きは俊敏なのでけして指を入れないようにと注意書きがある。鱗にかこまれた無数の瞳にいたたまれず、じっとみていることができない。年をとった鰐でもないが、ちょっとやそっとの理不尽なんて鱗ではね返してしまうだろう。
お昼に蕎麦を食べてからホテルについた。波が7〜8メートルと高いので、浜には出られなかった。室から浜をみおろしたら、波がざぶざぶきていた。

川本三郎「ちょっとそこまで」で「狐のだんぶくろ」に触れていて、澁澤龍彦が幼少期を綴った文章というのが気になって図書館で予約。狐のだんぶくろは(抄)だったが、澁澤龍彦の断片的な生い立ちを読んで、たのしかった。滝野川で育ったことも知らなかったし(いっとき旧古河庭園のそばに住んでいたので、懐かしかった)、浦和高校出であることも改めて思い出した。浦和北公園にある浦高生の像のように、マントに下駄をはいていたらしい。おにぎりではなくておむすびという家庭で育ったということは覚えておきたい。晩年の「都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト」は原稿写真も収録。澁澤龍彦の字はくるくると丸っこい。