まみ めも

つむじまがりといわれます

腹立半分日記

大寒の翌朝は雲がたれこめて寒かった。耳にイヤホンをつっこんで、シガーロスをきく。北陸を思い出すような重たいのしめった空にはシガーロスがよく似合う。北陸に暮らしていたころはなんとも思わないでいたけれど、関東にくると冬が本当にドライで、かつての小沢健二の軽薄な音楽は東京の冬にぴったりする。マフラーを巻いて、街へ出て、恥ずかしながらも行ったり来たりしたくなる。そんな関東の明るい冬に、ひょっこりうすら寒い重い日があると、いそいそとシガーロスを聴いてひとり雑踏のなかでノスタルジーに浸る。寒いので、マフラーをぐるぐるに巻いてニットの帽子をかぶり、マスクをつけた上からイヤホンをつかうと、ひも状のものの整理がつかなくなって、こんがらがって、いつもはずす順番がわからなくなる。そういう不器用さは、なんの役にも立たないがなくさずに持っておきたい気がする。

腹立半分日記 (文春文庫)

腹立半分日記 (文春文庫)

ブックオフで108円。筒井康隆のサラリーマン時代からきれぎれの日記が収載されている。後半は掲載誌を売るために露悪的に書いたらしい。編集者から税務署に至るまで、とことん文句を書いていておかしい。くそ。脱税してやる。どうしろというのだ。ふざけるな。の、オンパレードで、もっとやれもっとやれと言いたくなる。こういうのを真に受ける人たちがいるんだなあ。そんな立腹の最中で、筒井康隆の一人称が「ぼく」だったりしてちょっと意外。いまは「ぼく」なんて言わないだろうな。