年越しは鎌倉の山の家で。鯛のアクアパッツァ、鶏の丸焼きに天ぷらと、ご馳走の食べすぎを繰り返して体がずんずん持ち重りしていく。腹ごなしに海岸まで歩く。いなかの暗くふさいだお正月が身に染みこんでいて、太平洋のあかるい冬はいつまでたっても年越しの実感がなく、出汁のちがう具沢山のお雑煮もなじまないままで、ここ10年近く、ほんとうの意味ではお正月を迎えられていない。お正月とは肌感覚なのだった。失われたお正月たちが宙ぶらりんで浮かんでいる。こどもたちには、フォースと共にあらんことをといっておやすみをした。
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サーカスの花形から作家に転身し、自伝を書く「わたし」。その娘「トスカ」。ベルリン動物園で世界的アイドルとなった孫「クヌート」。人と動物との境を行き来しつつ語る、ホッキョクグマ3代の物語。『新潮』連載を単行本化。
祖母の退化論
死の接吻
北極を想う日
白い生きものが一人称で綴る三代記。いよいよ寒くなってきた季節に満を持して読んだ。