まみ めも

つむじまがりといわれます

私に付け足されるもの

母の日に花をもらった。濃い紅いろのガーベラが10本に、七草のどれかというのでなずなだろう。花屋を変えたらしく、いつもの店ではうつむき加減のガーベラがつんと上向きでエレガントな姿で花瓶におさまっている。ひとりのときに花びらや茎をそっとなでる。

外を歩きまわれないので、週末は餃子を包んで焼いた。リトドリンが効いているときは相変わらずぶるぶるするので、うまく包めないで難儀した。こどもたちもそれぞれに包んだ。ひき肉を500グラム使い、にらともやしとキャベツを混ぜて100個ほど包み、おおかたなくなった。商店街の青物屋でピーマンが15個100円と安くなっていたので、ぷすぷすピーマンと呼んでいる煮びたしを作る。ピーマンに爪楊枝で穴をぷすぷすあけて、甘いだし汁で煮立ててさまし、くたくたにする。へたも種もとらずにまるごとでいく。かぶりつくと中からだし汁がじゅわっとして、いくらでも食べられる気がする。初夏がからだのなかにしみわたるようで気分がいい。

私に付け足されるもの (文芸書)

私に付け足されるもの (文芸書)

 

ト。

トラに襲われたい。くっつけたい。あってほしい。地面を掘りたい。移動したい。いなくなってほしい。一緒に日食が見たい…。これは、くだらないのに難しい、願望の話。充実の全12作品を収録。『文學界』ほか掲載を単行本化。

四十歳 p5-25
白竜 p27-44
Mr.セメントによろしく p45-69
どかない猫 p71-77
潜行するガール p79-107
桃子のワープ p109-153
ムーンライト p155-178
雨漏りの音 p179-187
先駆者の最後の黒 p189-212
Gのシニフィエシニフィアン p213-235
瀬名川蓮子に付け足されるもの p237-261
そういう歌 p263-269

白竜が出てくるあたりのニッチぶりがくすぐる。白竜のスケールはいつだってむう規格外です。無表情な表紙の絵は白根ゆたんぽ

超短編アンソロジー

連休明け、診察。念のためリトドリンをプラス一週間。安静は解かれ、無茶と遠出はいけないといわれたので、そろりそろりと動く。やることなくて、フランスパンをこねて焼いた。クリームチーズと病院帰りに寄った百円ローソンのやっすいハムをはさんで、グリルで焼いてから、マスタードとマヨネーズをしぼってかぶりつく。身の丈にあったおいしさ。いろいろたのしみがあったはずだけれど、結局、図書館にいって、ケーキを買って、フォークでつついて食べて、自分を慰めている。おなかが重たいのを、湯舟にいるときだけは浮力で少しまぎれる。わたしも、こんなふうに、羊水に浮かんでいたのにな。

超短編アンソロジー (ちくま文庫)

超短編アンソロジー (ちくま文庫)

 

「ブ」で108円。

初の国産「超短編」アンソロジー。数文字から数百文字のミクロの物語、超短編とは、小説、詩、エッセイ、寓話…ジャンルの境界を漂いながら「短さ」によって生命を与えられた作品群の呼び名だ。古典と現代をつなぐ時の線上に超短編をとらえ、ホメロス、キャロル、カフカ宇野千代稲垣足穂村上春樹安部公房川上弘美筒井康隆などの作品95編を集めた。

目次

お話 マザーグースより

I 夢見

夢見るゴキブリ アウグスト・モンテローソ

或る晩のこと 宇野千代

二月 尾形亀之助

夢の門 ホメロス

魂結び 伊勢物語より

塔に昇る夢 高山寺明恵上人行状より

夢ノの鹿日本書紀より

イソポ、二人の侍、夢物語のこと 伊曾保物語より

飛ぶ男 本間祐

夢を買うた男 日本昔話より

II ノンセンスの微笑

春 安西冬衛

黒猫のしっぽを切った話 稲垣足穂

ボートを漕ぐ不思議なおばさん 辻柾夫

自転する男 岡崎弘明

アレクサンドロス大王 フランツ・カフカ

小説 A・ビアス

南泉、猫を斬る 無門関より

疱瘡を患った子を化け物と思った事 御伽物語より

雨乞ひに乙女を人身御供 明治の朝日新聞より

梅法師 一休

主君が宗旨を尋ねた事 浮世物語より

強情者だよビエッラの人は イタリア民話より

蛙の雨 ヘーベル

眼鏡 ユダヤ笑話より

目を覚まして眠っていた百姓のこと イェルク・ヴィクラム

病気見舞い 日本昔話より

どっこいしょ 日本昔話より

定期券 桂枝雀

ふた首穴のセーター 江坂遊

足 マザーグースより(北原白秋訳)

代名詞の迷宮 ルイス・キャロル

路上の偽騎士 イギリス物語歌より

ちよつとした奇蹟 竹中郁

牛乳 村上春樹

夏は夜 高階杞一

III 愛してる愛してない

離魂病 狂歌百物語より(小泉八雲英訳)

母恋餓鬼 寺山修司

妖精の子供 サミュエル・ラヴォー

蝶 ルナール

弟子 オスカー・ワイルド

王威 アルチュール・ランボー

梨の花の揺れた時 吉行理恵

小オキキリムイが自ら歌った謡「クツニサ クトンクトン」アイヌ民謡より

蚊 シベリア民話より

おめでとう 川上弘美

紀元節 夏目漱石

第十七夜 アンデルセン

IV この世界

万物創造 マヤの神話より

果ての国 列子

十二月三十日、日曜日 ラス・カサス神父

風ーー大地をめぐる、空気の運動。 プラトン

海 千田光

そのものの名を呼ばぬことに関する記述 谷川俊太郎

みかんの中の楽しさーー巴きょう人 牛僧孺

幸福 辻まこと

フジヤマ アルフレッド・ジャリ

左と右 安野光雅

地上楽園 芥川龍之介

どこへでも此の世の外へ ボードレール

造船所のイソップ

小さな寓話 カフカ

離陸 田木繁

声 W・B・イエイツ

すっぽんの鳴き声 寺田寅彦

生命に就て 稲垣足穂

V 生き物たち

けんか きたやまようこ

鷄鳴 内田百間

死なない蛸 萩原朔太郎

河童 柳田國男

大道芸術女砂文字の死 篠田鉱造

おまつり 本間祐

狼と小羊 ラ・フォンテーヌ

ピュタゴラス ディオゲネス・ラエルティオス

黄帝 列仙伝より

大気都比売神 古事記より

絵師 逸名

曹操 世話新語より

蛇にとつげる女を医師がなおした話 今昔物語より

蛇 ルナール

猟師 クルイロフ

黄色い詩人 谷川俊太郎

ある男と無花果 小川未明

【あずまおとこときょうおんな】別役実

ち、畜生のかなしさ。 太宰治

樹 入沢康夫

変身 寺山修司

人間は野獣よりもっと悪い スウェーデンボルグ

大正七年正月七日 永井荷風

九月十四日 曇 正岡子規

剥製の白鳥 芥川龍之介

頭がない 尾形亀之助

トゥルーデおばさん グリム童話より

二人の浮浪者の話 安部公房
天狗の落とし文 筒井康隆

「蛇」「死なない蛸」よかった。死なない蛸はレオポール・ショヴォの年をとった鰐に似たかなしみ。こんなふうにかたちを失えたら、ちょっとスッキリするかもしれない。

大人問題

連休中、動きまわれないので、地元の図書館で借りてきたDVDでこどもたちとラピュタを見た。バルス、と唱えたくなるような崖っぷち。父と母が病と介護ののっぴきならない状況で「死の棘」の淵に追い詰められていることに、自分自身のことにかまけてきづかなかった無力感。押し寄せることが多すぎて優先順位がつけられない。どうにもならんこともある。実家の和室で布団に寝そべって、夜中、目が覚めて、眠れないままたらたらと涙を流した。東向きの障子がしらじら明けていく。外に出て夜明けの空気を吸い込みたいと思いながら布団から抜け出せなかった。

大人問題 (講談社文庫)

大人問題 (講談社文庫)

 

「ブ」108円。

子どもにとって大人は有害である!
大人は有害である。いじめ、閉じこもり、不登校……子供問題は世間を気にし、教えたがり、試したがる大人に問題がある。子供は大人の充足のためのものではない。新人、ルーキーだ。「これから何をするんだろう」「いつ化けるかな」大人は緊張し、楽しみに見守るサポーターになろう!!心がほぐれ、元気の出るユニークな子供論。 

あああ、ほんとうにあれもこれもすみません。

もしもし、運命の人ですか。

庭、モッコウ薔薇とテッセンが咲いている。白山、ことしは雪がしろく残ったまま。水の張ったとなりの田んぼに木の枝を突っ込んで遊んでいたこどもたちをのぞき込むと、うねうねと泳ぐひるを釣っていた。ひるがなんなのか知らないでいる。血を吸われるぞと脅しておく。

できるだけおなかにgのかからないように、台所の手伝いも椅子にかけたままでやる。椅子にかけて包丁をにぎるとジョゼになった気分。ドサっと車椅子から降りたジョゼの淡々としたしなやかさを思う。恒夫はほんとうにあかんたれやったなあ、そこで泣くなよ。ああでもここにもそこにもだめなやつばっかり。高校生のとき、友達が購買部におにぎりを注文するとき、ツナマヨ以外と頼んでいたのをふと思い出す。だめなの以外でお願いします。注文リストからのぞかれるわたくし。

もしもし、運命の人ですか。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

もしもし、運命の人ですか。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

 

ブ。108円。

間違いない。とうとう出会うことができた。運命の人だ。黙々と働く昼も、ひとりで菓子パンをかじる夜も、考えるのは恋のこと。あのときああ言っていたら…今度はこうしよう…延々とシミュレートし続けた果てに、「私の天使」は現れるのか。

「ときめき」延長作戦
いちゃいちゃ界
苺狩り
理想の男性像
「似ている」事件
性的合意点
次の恋人
好意の数値化
一次会の後で
料金所の女神〔ほか〕

穂村弘のときめきの才能がスパークするエッセイ。そうか、このだめぶりも全て計算の上。さすがもと総務課長。運命がごろごろころがっている、最後まで信じられた人が勝者。

料理が苦痛だ

日曜は法事をみっつ一気にやることになり、あっちとこっちでお経をあげてもらい、親族でわやわやとお昼をした。こっちからあっちへ抜けるときに通る神社の境内のにおいが懐かしくて一挙にトリップし気が遠くなる。病床の父がウクレレ岡村孝子を歌う。リトドリンは相変わらずどくどくする。夜は寝る前の二錠がきいて眠れなくなり、寝床でこどもたちに挟まれながら宇多田ヒカルSpotifyで小さく流してやり過ごす。宇多田ヒカルにリトドリン・ビートと田んぼの蛙が唱和する。

料理が苦痛だ料理が苦痛だ
 

ト。

「ちゃんとした料理」を「作り続ける」ことに疲れてしまったすべての人に向けて、「作らない料理教室」主宰のカフェオーナーが、「作り続ける料理」からの脱出法を教えます。これなら作れるレシピ付き。

www.twoeggz.com

料理で読むミステリー

やっと仕事が休みにはいり、雨の中、ふーたんの歯医者をすませてブックオフへいき、久しぶりにのんびりと物色をたのしんだ。

世界のサッカーエンブレム   斉藤健仁・野辺優子

大人問題   五味太郎

もしもし、運命の人ですか   穂村弘

世界ぐるっと朝食紀行   西川治

超短編アンソロジー   本間祐

庭のつるばら   庄野潤三

すべて108円。ほくほくした気分で病院にいったら、安静を命じられ、リトドリンをその場で処方、すきっ腹に飲み干してどきどきの止まらない状態でふらふら帰宅した。かくかくしかじかの状況もあり、紹介状をもって、次の朝、実家に戻る。リトドリンを飲むたびに時間差でどきどきとぶるぶるが襲ってくる。ソファに寝そべってハアハアする。自分を取り巻く状況は見事なまでに安静からはほど遠く、うんざりを叩き売りしたいほど味わっている。おまえにもおまえにもわたしにもうんざり。

料理で読むミステリー (生活人新書)

料理で読むミステリー (生活人新書)

 

ト。

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ボクたちはみんな大人になれなかった

こないだの日曜、ふくちゃんのお誕生日祝いをした。小学校がはじまってからうつむき加減のふくちゃんに、リクエストをきいて、とことんこたえる。ポテトサラダ、フライドポテト、コーン炒飯、日高屋の餃子。カロリー上等。お友達もよんで、KFCや焼き芋や海苔巻きが追加されて賑やかな会になった。チョコバナナケーキでクラッカーを鳴らして、たのしい午後だった。おめでとう、ふくちゃん。

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

 

ト。

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