まみ めも

つむじまがりといわれます

悪いやつの物語(ちくま文学の森)


芸語(山村暮鳥)/昼日中/老賊譚(森銑三)/鼠小僧次郎吉芥川龍之介)/女賊お君(長谷川伸)/金庫破りと放火犯の話(チャペック)/盗まれた白象(マーク・トウェイン)/夏の愉しみ(A.アレー)/コーラス・ガール(チェーホフ)/異本「アメリカの悲劇」(J.コリア)/二壜のソース(ダンセイニ)/酒樽(モーパッサン)/殺し屋(ヘミングウェイ)/中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃(三島由紀夫)/光る道(檀一雄)/桜の森の満開の下坂口安吾)/女強盗(菊池寛)/ナイチンゲールとばら(ワイルド)/カチカチ山(太宰治)/手紙(モーム)/或る調書の一節(谷崎潤一郎)/停車場で(小泉八雲
家の風呂場にある花王のボディソープには「蘭の花束の香り」と書いてある。蘭の花束の香りというのは、つまるところ蘭の花の香りだろうと思うけれども、たしかに、蘭の花の香りより、蘭の花束の香りのほうが、なんとなくはなやかで豪奢な印象をするので、感心してしまう。こういうチョットしたことにもぬかりないんだなあ。で、ちくまの「悪いやつの物語」というのもいい。悪者の物語より、悪いやつの物語のほうが、うまくいえないけれども夢がある感じ。それで、トコトン悪いやつからチョット悪いやつまでいろんな悪いやつが一冊に入っている。ワイルドの「ナイチンゲールとばら」、これなんか、誰も悪くないような話なのだけれど、知らずしらずのうちにみんなが残酷なような気がしてしまう物語。このオスカー・ワイルドの経歴に「(オックスフォード大学に)在学中よりダンディで知られ、」とあるのが気になる。ダンディで知られるほどのダンディってどれほどのダンディなんだろうと思う。ダンディって言われるとゲッツしか思い浮かばない。
きのうは病院。どうもバセドウ病らしい。診察室に入ると、血液検査の結果と照らし合わせながら、先生が丁寧に絵を描いて説明してくれる。まず、顔の下半分から胸もとまでの人体の絵を描いて、のど元にまあるいハートを描いて、これが甲状腺ですという。わたしはこの甲状腺から出るホルモンが多いのだという。たしかに数値は標準値を超えていた。その次に、顔のまんなかに鼻の絵を描いて、脳下垂体と記す。ここから出る甲状腺刺激ホルモンは、逆に減っているのだという。たしかに標準値に届かない。それで、先生は、たとえるとしたら、甲状腺は社員ですといって、ハートの隣に社員と書き込む。次に、下垂体は部長ですといって、下垂体のところに部長と書き込む。ふだんは、社員は部長の命令で働くのだけれど、わたしの場合、部長が命令しないでも社員がバリバリ働きまくってしまうので、部長はいいやと思ってグータラ休んでいる状態だと、説明してくれた。社員が働きすぎて困りものというのが、実際の会社と違うところか。わたしの鼻のあたりにグータラの部長さん、のど元のあたりに働きマンの社員たちがいるのを想像して、おかしい。おかしがる余裕があるので、たいした病気でないだろうとのんきに構えている。