まみ めも

つむじまがりといわれます

思いがけない話(ちくま文学の森)

思いがけない話 (ちくま文学の森)
夜までは(室生犀星)/改心(O.ヘンリー)/くびかざり(モーパッサン)/嫉妬(F.ブウテ)/外套(ゴーゴリ)/煙草の害について(チェーホフ)/バケツと綱(T.F.ポイス)/エスコリエ夫人の異常な冒険(P.ルイス)/蛇含草(桂三木助)/あけたままの窓(サキ)/魔術(芥川龍之介)/押絵と旅する男江戸川乱歩)/アムステルダムの水夫(アポリネール)/人間と蛇(ビアス)/親切な恋人(A.アレー)/頭蓋骨に描かれた絵(ボンテンペルリ)/仇討三態(菊池寛)/湖畔(久生十蘭)/砂男(ホフマン)/雪たたき(幸田露伴
思いがけない話と銘打ってあるものだから、思いがけないことを想定してページを繰るわけだけれども、冒頭の室生犀星の詩が想定外の思いがけないぶりだった。

夜までは


男といふものは
みなさん ぶらんこ・ぶらんこお下げになり
知らん顔して歩いてゐらつしやる
えらいひとも
えらくないひとも
やはりお下げになってゐらつしやる
恥づかしくも何ともないらしい
お天気は好いしあたたかい日に
ぶらんこさんは包まれて
包まれたうへにまた叮嚀に包まれて
平気で何食はぬ顔で歩いてゐらつしやる
お尋ねしますがあなた様は今日は
何処で誰方にお逢ひになりました
街にははるかぜ ぶらんこさんは
上機嫌でうたつてゐらつしやる

なんてのどかにさわやかに、男性器をうたうんだろう。うっとりする。思わず「内閣発足」「G8首脳」という単語で画像検索して、集合写真の「えらい(らしい)ひと」にひとつひとつぶらんこさんを想像してしまった。ヘンリー・ダーガーよろしく女性の閣僚にもぶらんこさんを想像してみたりして。この暑さの下、街ゆくぶらんこさんは包まれたうへにまた叮嚀に包まれて、上機嫌でうたうような具合にはいかないだろうと思う。お察しします。