まみ めも

つむじまがりといわれます

湖畔

久生十蘭という人を、これまで知らなかったのを、「思いがけない話」に収録されてあった「湖畔」があんまり面白いので、一挙に好きになった。「湖畔」は、尊大な男のねじれきったラブストーリーと言ったらいいのだろうか、男から息子への手紙という形式でつづられる物語で、男のねじれきった愛、それを受け止めきれなかった女が裏切りをはたらいて、それを知った男が逆上して首を絞める、と、一見凡庸な展開をたどるようだけれども、そこはやっぱり思いがけない話として収録されているだけあって、思いがけない出来事が待ち受けていて、それというのは、死んだ女が霊となってあらわれてふたりは結ばれるというような内容で、その狂気じみた展開を有無をいわさず読者に受け入れさしてしまうような男の語り口にぐいぐい引き込まれてしまうのだった。狂気じみてすさまじく生々しく美しい物語だった。久生十蘭というひとの才能にいや応なく魅了されて、もっともっと読みたい。
今日は二週間ぶりの病院。確定診断がくだって、バセドウ病ではなく甲状腺炎だった。半年ぐらいすれば落ち着くものらしいが、ふた月に一度くらい病院にでかけて、ホルモン値を確認してくださいとのことだった。甲状腺ホルモンの値が高いことには変わりなく、甲状腺ホルモンが高いというのは、体が常にジョギングしているような状態だというけれど、それほどのものとも感じない。ウォーキング程度だとおもう。ウォーキング程度とはいえ、実際のところはなにも動いていないので、つまりはエネルギーの空費に過ぎない。どうもエコに反する体になってしまった。いま、心拍数がだいたい100/分あるが動悸というほどのことはなく、寝るときになかなか寝付かれないで、そうすると心臓の拍動が気になりだすような具合。やたら暑くて汗をかく、汗をかくので体がかゆい、ただでさえ興奮気味で寝付かれないのにかゆみも加わって余計寝付かれない。食欲はあがったり下がったり、好きなものを好きなだけ食べているけれども、血中コレステロールは低く(とはいえもともと低かった)、体重もすこし減った。こう書いていると、やっぱりたいしたことのない病気ではあり、痛苦は伴わないし大いに活発元気なのだけれども、チクチクと針で刺激されているような煩わしさがある。煩わしいことはないにこしたことはない。はやく半年が過ぎればよい。