まみ めも

つむじまがりといわれます

日本幻想小説傑作集(1)

日本幻想小説傑作集 (1) (白水Uブックス (75))
佇むひと(筒井康隆)/山月記中島敦)/白いワニの帝国、老車の墓場(五木寛之)/金の輪(小川未明)/押絵と旅する男江戸川乱歩)/人魚伝(安部公房)/くだんのはは(小松左京)/春泥歌(赤江瀑)/ニノ橋 柳亭(神吉拓郎)/老人の予言(笹沢佐保)/かくれんぼ(都筑道夫)/トロキン(眉村卓)/子供のいる駅(黒井千次)/魔術(芥川龍之介
軽井沢の古本屋で、たしか¥500だった。たいした期待もしないで古本屋の暖簾をくぐって、こどもを抱いていたものだからそぞろに背表紙を眺めていたが、久生十蘭を見つけたらテンションがあがってしまい、そのテンションに任せてあと三冊するすると選んだ。お会計は¥1800、わたしはおつりを出しよいように¥5300払ったが、店主はおつりの計算ができずに電卓をたたき、電卓のたたき出した数字を見て合点したとみえたが、ハタと500円玉がないものだから、こんぐらがった表情になってしまった。そこで、宙ぶらりんになった300円をわたしが引き取り、あと200円ですと促したが、なかなか通じないでまた電卓を叩くので当惑した。あとの車中で、あの店主は計算ができない、といってみたが、あれで計算ができないといわれると立つ瀬がないという人間がその場には少なくともふたり混じっていたことが判明した。平野レミが、算数ができないのもひとつの才能だといっていたのを思い出す。
この本は、中島敦小川未明安部公房芥川龍之介と、居並ぶ作者の名前にひかれて手にとってみたものの、実は、山月記押絵と旅する男、魔術、この三つはちくま文学の森で既読だったので、若干冴えない買い物だったといえる。ナンボ傑作でも、おなじ話を短期間になんべんも読むもんではないなと思った。ファンタジーといってもじっとりするような話が多くて、なんとなく今は気持ちがべたつくようで少々疲労感が増す。それでも安部公房のじっとり感は生臭く薄気味悪いが嫌悪感が少ないので不思議。
本来なら石川に一週間滞在したのち、ハワイに高飛びするつもりだったのが、地震でハワイどころではなくなってしまった。しばらく石川で様子を見ることになり、車の運転もできない、ちいさいこどものいる、わたしには、やっぱりできることは募金ぐらいしかなく、きょうもやっぱり本を読んでいる。