情婦

ならし保育が午後までのびたものだから久しぶりに映画館に足を運ぶことにした。ギンレイホールや早稲田松竹の上映スケジュールを照らしたが、埼玉くんだりから上京し、映画二本をやって、帰ってくるとなるとどうにも時間に無理があってあきらめた。浦和とさいたま新都心のシネコンで作品をさがしてみたら、新都心で午前十時の映画祭というのをやっていて、「何度見てもすごい５０本」と銘打って週替わりでいろんな映画をやっている。これに決めた。平日の朝というのに、シネコンのなかだけはわっと人があって、妙な活気がある。わたしもいそいそとミルクティとドーナッツを買い込んで通路側の席に座を占めた。
映画はマダム殺しの真相をめぐる法廷サスペンスなのだけれども、とにかくおもしろかった。エンドロールでは映画の顛末を他言しないようにという注意がなされる。詳細は割愛するが、気持ちよく裏切られ、映画館をでた。すっぱりした気持ちにぬるくなったミルクティを流し込んだ。
きょうはこれからおなじ監督のサンセット大通りというのをみる。通路側の席を買った。ミルクティにドーナッツもこないだとおなじ。となりの奥方はパンプスを脱ぎすてて席上に正座し、ケットで折り畳んだ脚をくるんだ。うしろの奥方は持参の水筒からこぽこぽとお茶を注いだ。観客の準備は万端ととのった。