まみ めも

つむじまがりといわれます

第四次元の小説―幻想数学短編集

第四次元の小説―幻想数学短編集 (地球人ライブラリー)
北浦和ブックオフで¥105。読まなければ後悔します、と、脅し文句のような文言が帯に書いてあり。はっきりいってわたしの人生は後悔することばっかし。来し方を振り返ると怨嗟呪詛のことばばっかり口をついて出てくるものだから、振り返ることをあえてしない。おかげさまでポジティヴに人生を歩んでいる次第。ともかく¥105で人生の後悔がひとつ減ったとおもうと、おもわずスキップしたいような気分だけれども、ぐっと堪えて徒歩で帰宅。途中で路傍のタンポポなんて摘んでみたりして。

数学のできない学生が数学教授の娘に恋をした。結婚が許されるための条件は、無限の速度を手に入れる方法を考えること。そこで彼のためを思う友人が考え出した妙案とは…。 恋の成就のために究極のマシンの開発を目指す『タキポンプ』。「一部屋分の敷地に八部屋分の広さがある。たったいま、ぼくはその家に関する革命的なアイディアを思いついた」-ありきたりな家の設計にあきあきした一人の建築家が、友人をそそのかして、四次元から着想を得た斬新な家を建てさせた。ところが、できあがったはずの家は建築家の予想とは似ても似つかぬものだった…。 四次元空間にスリップした家をめぐる悲喜劇を描く『歪んだ家』。そのほかメビウスの輪と化した地下鉄網から突如電車が乗客ごと消失する『メビウスという名の地下鉄』、世紀の難問「フェルマーの定理」にいどむ羽目になった悪魔の哀れな苦闘を描く『悪魔とサイモン・フラッグ』など、数学をモチーフとした短編七編をおさめ、あなたを奇妙な空想の世界にいざなう、ちょっと変わった小説集。

メビウスの帯だとかクラインの壷だとか、じぶんの認知のぎりぎりをためされているような題材を扱った小説集。森毅氏が、解説にて、数学は虚構は虚構にちがいないが、そのなかに一種のリアリティがあるといっていて、なるほど、数学同様、小説だって、虚構は虚構にちがいないが、やっぱりリアリティを含んでいるわけで、読んでいるうちに小説のリアリティが迫ってきて、じぶんのいるこの世界がメビウスの表なんだか裏なんだか、いや、メビウスに表も裏もないのだけれど、世界が知らん顔して裏返ってしまっていたらどうしようなんてちょっとそら恐ろしくなってみたが、かんがえてみたら世界が裏返ったからといってとくに困ることも思いつかないので、気にしない。