まみ めも

つむじまがりといわれます

サンセット大通り

サンセット大通り [DVD]
かつての大女優がうれない脚本家を燕にし、痴情におぼれ、殺人に至るまでの顛末を描いた作品。かつての大女優を演じたグロリア・スワンソンの憑依っぷりがものすごい。どこかしら童話めいた展開からどツボにはまっていく脚本が容赦なく秀逸。悪い夢から醒めたような気分でエンドロールをやりすごし、劇場をふらふらでたところで電源をきっていたケータイに不在着信があり、ぴんと閃いたその直感に違わず、息子が発熱したとの保育園からのしらせなので、一気に我にかえりあわてて駅にむかいホームに滑り込んできた京浜東北線の車両にとびのった。
息子はかれこれ二週間あまり発咳と発熱を繰り広げており、ちかくの小児科で気管拡張薬も抗生剤もためしたが埒があかず、ついにきょう、紹介状をにぎりしめて総合病院を受診するに至った。病院にむかうタクシーの運転手は、熱心に病院に至るまでの道すじを説明するのだが、左手で長方形を空に描いて、病院は右上にあって、われわれはいま左下の対角にある、それで、左上を経由して右上に至る道と、右下を経由して右上に至る道と、ふた通りあるが、わたしら右下を経由するほうでいく、という話を、ジェスチャーでもってみたび繰り返した。でもって、みたびとも、ま、どっちでもいンですけどね、ととってつけるのだった。つまり、こんな話をみたびもやるほどに、病院まではすこし遠かった。病院ではレントゲンに血液検査をやり、肺炎のみならず貧血もあるというので、そのまま入院することになった。息子は手の甲にカテーテルをやられ、体幹には呼吸と心拍のモニタリングをぺたぺたと貼り、足の親指で血中酸素のモニタリングというさまで、とにかく管だらけになっており、ネブライザやら痰の吸引やらにかなりショックを受けた様子で泣き叫びもしたが、いまはすやすやと休んでいる。一週間ほど入院することになるらしい。病室の窓からは田畑の広がる先に夕景の富士山がみえた。息子がねむったあとの時間をもてあまし、簡易ベッドで本を読む。ときどき呼吸数や心拍が上下すると、飛行機の離陸の合図に似たアラームが鳴る。それ以外はやたらしずかな夜。