まみ めも

つむじまがりといわれます

新サラリーマン物語

新サラリーマン物語
「へこきよめご」という絵本をブックオフでみつけて、筈氏がなつかしがるものだから買った。タイトルでまさかとおもったが、そのまさかなので、新妻のへこきがとんでもない。効果音はずぼぼぼぼかーん、ばさまも猫も米俵も吹き飛ばしてしまういきおい。役に立つへこきじゃ、とめでたしめでたしとなる屈託のない展開はよいのだが、よめごの屁のにおいについて触れられていないのが気にかかる。わたしは婚約中、もつ鍋とビールをやったあとのものが強烈すぎて、結婚を一考する必要があると宣言されたことがある。はじらい混じりに廊下でひっそりといたしたにも関わらず、においがからだにまつわりついて部屋のなかまで追いかけて、その残り香が十全の威力を保持していた。顛末としては無事に結婚したのでよかったとおもうが、むこうではあのとき思い直しておけばよかったとおもっているかもしれない。松田聖子は結婚生活中、一度もおならをしなかったとテレビで神田正輝がいっていた。さすが。
沢野ひとしのエッセイなんだか漫画なんだかわからないこの本は1988年のもので、あたいね、と話すはすっぱな女(という表現)が出てくるあたりに時代をかんじる。沢野ひとしというひとの絵は独特で、ぷるぷる震えたような線でこころもとない絵を描いているが、文章もまた似たような具合で話があっちこっちちっとも定まらないのが妙な哀愁をはなっている。漫画にしても、なんの脈絡なのか突然、アカイエカ、とだけ書いたコマに蚊が一匹とベッドの絵があったりして、深読みしてよいものかどうかすらわからない。実体験なんだろうがこのひとが語ると全部どこまでが本当なんだかわからない。文章に差し挟まれる(笑)ですらちっとも笑っていないようにうつる。たぶん笑っていない。すっかりおいてけぼりを食らってしまった。