まみ めも

つむじまがりといわれます

カッコーの巣の上で

カッコーの巣の上で [DVD]
風呂からあがったら母親が腹のでっぱりがすこしおりてきたようだという。心なしか、腹のなかでうごうごしたときに感じる場所もちがってきたようだ。お産が近づくにつれて前回のことを思い出してきた。出産自体は痛みを伴ったものの、ファンタジーさと突き抜けた感じとがあってちょっとした快感だったのだが、その夜は裂けた痛みがじんじんとものすごくて痛み止めを飲んでもねむれないで、全身が局部と化して自分自身が裂けめそのものになってしまったように錯覚するほどだった。翌日はといえば両のおっぱいがぱんぱんに膨らんで熱をもち、アイスノンをのっけて冷やしたがそれでもねむれなかった。思い出すとなんとも滑稽でわらってしまう。わらう余裕があるので今回も大方なんとかなるだろうとたかを括っている。
カッコーの巣の上で、は、つたやにいくと大体ジャケットが正面をむいておすすめされており、その絵面が目に残っていたせいか、見たことがあるかもしれないと思って借りたが、全然しらない話だった。つたやでのおすすめぶりからわかりやすいヒューマンドラマを想定して鷹揚にかまえていたら不意打ちをくらった。要は精神病棟での一連のごたごたなのだが、精神的にもろすぎるひとたちがぐいぐいと追い詰められる場面がところどころ息苦しく、終始もやもやとわだかまり、エンディングの割り切れなさにがーんと虚脱感をお見舞いされた。登場人物の多くは完全にマッドなわけではなく正気と狂気のあいだで揺れているようなところがあり(患者だけではなくみんなどこかしら揺れているのだが)、心配症なわたしはかれらの綱渡りみたいな危なっかしい熱狂や自由にマッドネスがいつ爆発するのかとひやひやし、ハイライトとなる病棟でのパーティシーンも破滅の予感に満ち満ちていて、はやくやめてくれーと願いながら見た。でもってやっぱりドミノのように弱いところがばたばたと崩れていって、破滅がやってくる。ラストは破滅ながらも解放感が演出されていたが、そんなぬくいもんではない。主演のジャック・ニコルソンはイージー☆ライダーでニッニッと陽気でおばかなアル中だったのが、まるでひとが違った。