石川で過ごす週末も最後なので、夫とセイちゃんと三人でドライブ、お昼を済ましたあとで車を海の方角に走らせる。西にいけば海につくだろうと当てずっぽうに道を選んでいくと、そのうち家屋に海辺の風情がしてきて、アスファルトの上を砂利がざらざらしている細い坂道を、くだって、のぼると、海にでた。海にでる道で砂利を踏むタイヤの音が胸をせつなくする。砂浜には釣り人がまばらに見えて気だるい陽射しを浴びている。船が何槽か遠くからやってきて、ちいさな灯台のある港のむこうに消えていった。砂浜には降りないで、テトラポットのむこうの海をぼんやり眺めて、車に戻ると、親戚の家でもらってきた苺が車中の気温でぬくまって、甘いにおいを充満していた。そのあとは東へ、鍋谷の集落をとおり、山道をしばらくのぼった。杉の木立のなかをせせらぎが流れて、鳥がさえずり、セイちゃんはチャイルドシートでねむってしまった。段々に家に留守番しているフクちゃんが気になりだし、気になるとおっぱいの奥がツーンとして張ってくる。なんとなく言葉すくなになってしまい、引き返すことにした。家につくと、フクちゃんはベビーベッドですうすう寝ており、ほっとする。湯を沸かし、焙じ茶をいれて、ぬるく甘い苺をつまんだ。
- 作者: 安野光雅,河合隼雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/03
- メディア: 単行本
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