往来の雪だるまがどんどんこじんまりとしていく。日なたにあるものは短命、日陰ものはしぶといが日も当たらずにさみしげに佇んでいる。どういういきさつか首がとれて傍らに転がり「盛者必衰の理」しているものもある。そういえば二十歳のころ、父方の祖母からきた手紙の冒頭に、「祇園精舎の鐘の声」と平家物語が毛筆でしたためられており、祖母の性格から察するにとくに理由はないんだろうが、とてもびびったのを思い出す。当時、おかまから間違い電話がかかってきて、ケンジと名乗るおかまとしばらく会話(彼は職業おかまだった)、あんた何型?と血液型を尋ねられ、B型だとこたえたら、アラ、B型なの、吉川晃司と同じじゃない、わかる?キッカワコージ、あいつ、食えない男よ、といわれたのも忘れられない。こういう取るに足りない記憶だけは真っ白いシャツにはねたミートソースのしみのようにいつまでも鮮やかだ。将来呆けたときにはこういうわけのわからない記憶が噴出して脳内に曼荼羅が描けるかもしれない。
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