まみ めも

つむじまがりといわれます

パプリカ

雪が降った翌朝はかちこちに凍って足元が危うく、保育園を休ませた。陽射しがでてきたころに外へ出る。コンビニで菓子パンを買って、家のまわりをぐるりと歩く。あちこちの軒先に雪だるま。雪だるまが、どんどんとむなしくなっていく様子が好きだ。こまかい造作をみるといよいよおもしろい。口にビスケットを詰め込まれていたり、目がWILD HEALTHという得体のしれない飲料の蓋であったりする。よそ様の家の玄関先までおずおずと覗き込みながら、ワイルドと健康の二律背反について考える。雪だるまはとぼけ顔を決め込んでいる。

パプリカ (新潮文庫)

パプリカ (新潮文庫)

岸本佐知子の本で絶賛されていたのを図書館で予約。夢を題材にしたSF小説で、これはまさかの夢オチしないと収拾がつかんのではと途中から心配になるのだが、とにかくおもしろかった。頭のなかで映像がめくるめくしていく。頁からとびだしてくるようなスケールのでかさ。アニメ化されているらしいのでそのうち見たい。パプリカというのは精神科医の女が夢探偵をやるときのコードネームなのだが、パプリカは健康的で瑞々しく溌剌したエッチな女の子のキャラクターで、フィクションに片足突っ込んでいるような存在であったりし、いかにもパプリカの名にふさわしい。パプリカの形はじっと眺めていたら異次元にとんでいきそうな曲線だし、なんとなく俗世離れした刹那的な野菜という感じもする。トマトやパセリやセロリではこうはいかんだろう。柴田元幸が、アダムとイブの禁断の実はけっしてリンゴと明言されているわけではないが、やっぱりリンゴ、リンゴをひとくちしゃくったときの「取り返しのつかなさ」はリンゴにしか演出できない、といっていたが、パプリカも絶妙な選択。赤シャツにブルージーンズでわたしもパプリカしたいが、わたしはどちらかというとセロリパセリの類で、色気なんかどこ吹く風、独特の臭みが鼻につくタイプ。しかたない、緑のカーディガンを羽織る。弁当の隙間をうずめる彩りぐらいに使ってやってください。