雨と体調不良で冴えない連休だった。梅雨は明けないし、オリンピックは開幕しないし、こどもたちは咳と鼻水が止まらないし、げんちゃんは保育園にならされないし、洗濯物は生乾き。まあでもいつだってこんなもんだった。週明けの朝、せいちゃんはだるくてごはんを食べられず学校を休んだ。冷房のきいた部屋でソファに寝そべって本をぺらぺら読んでいる。いまはハリー・ポッターを。かれこれ二週間ほどくすぶっているうちにすっかりやせ細ってしまった。ふたりでお昼にそばを啜る。もうすぐ仕事に戻らなければならない焦りがじりじりと迫る。
ト。
愛する長女のために素敵な誕生パーティを開こうと格闘する父親、人間モルモットとして薬を投与される若者たち、暴力の衝動を膨れ上がらせる若き元軍人…。ダメ人間たちが下降のはてに意外な気高さに輝く姿を描き出した短篇集。
ビクトリー・ラン p5-31
棒きれ p33-35
子犬 p37-51
スパイダーヘッドからの逃走 p53-94
訓告 p95-102
アル・ルーステン p103-121
センプリカ・ガール日記 p123-190
ホーム p191-228
わが騎士道、轟沈せり p229-241
十二月の十日 p243-283
ここにもなかなか冴えない人たちがなかなか冴えない日々を過ごしている。笑って、笑いながら泣いてしまう。笑っているのも笑われているのも、自分だという気がする。