いつもこの季節にはなにを着て過ごしているのかわからなくなる。ひさしぶりに薄手の黒いカーディガンをひっぱりだして広げてみたら、虫くいなのかあちこちに穴があいていた。すかしてみたら星空みたい。星空、迷いなく捨てる。
誰にも言っちゃ、だめだよ。ふたりだけの秘密……高校教師の桃井銀平は、教え子の久子と密かに愛し合うようになる。だが、二人の幸福は長く続かなかった――。湖畔で暮らしていた初恋の従姉、蛍狩りに訪れた少女など、銀平が思いを寄せた女性たちの面影や情景が、中世の連歌のように連想されていく。作家の中村真一郎が「戦後の日本小説の最も注目すべき見事な達成」と評した衝撃的問題作。
川端康成の話をしようじゃないか、を読んでいたらひさしぶりにむらむらしてきて、本棚から手に取った。ネジがとんだ変態っぷりが研ぎ澄まされたきんきんの文章でしたためられていて、しびれる。