まみ めも

つむじまがりといわれます

ヘンリーくんと新聞配達

週末の夜、ふくちゃんのお誕生日祝いを家族で。リクエストは餃子と炒飯、コーンスープにチョコバナナケーキ。お安い御用と張り切って台所に立つ。プレゼントはレッズのユニフォーム。早速袖を通してポーズを決めてくれた。

ヘンリーくんと新聞配達 改訂新版

ヘンリーくんと新聞配達 改訂新版

 

ト。ふくちゃんと読み進めるヘンリーくんシリーズ。せいちゃんもシリーズのはじめから再読することになり、本の虫のせいちゃんにあっという間に追いつかれてもう背中にへばりついている。

ヘンリーくんのゆめは、新聞配達員になることです。きゅっと新聞をしごいて、ぽーんと玄関に投げこんでいく―上級生の男の子のかっこいいすがたにあこがれて、ヘンリーくんは、ぜったいに新聞配達員になろうと決心しました。けれど、まだ十歳のヘンリーくんは、なかなかやとってもらえません。なみだぐましい努力のすえに、ようやくチャンスをつかむのですが…。アメリカ児童文学の傑作!

そういえば新聞配達をやってたなあ。せっせとためたお金でジャスコでCDを買っていたっけ。いつのまにかジャスコはイオンになっちゃった。

春にして君を離れ

月曜がふくちゃんの誕生日だった。九歳。朝、いつもよりずいぶん早く起きてきて、おじいちゃんおばあちゃんから届いたバースデーカードとプレゼントの包みをあけて、二度寝していた。二度寝のある誕生日がうらやましい。

仕事のあとでお迎えをすませて家に戻ったら、庭先に出てきて、冬に学校でもらった種から育てた大根をバースデー記念にいよいよ抜こうという。ふくちゃんに、ふみがしがみつき、その後ろをせいちゃんが引っ張って、背後でベビーカーのげんちゃんが控えている。よいしょと抜けた大根は葉っぱばかり立派でひょろひょろと長細いのだった。大きなかぶならぬ細い大根。次の朝の味噌汁の具になった。

ト。

優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。

三月の図書館では文庫というざっくりとしたテーマで棚が作られていた。はじめて読むアガサ・クリスティー。いつ人が死ぬのかとそわそわしたけれど、当初は別名義で書かれたというだけあって、不穏な空気をまといながら、起こらようで起こらない、起こらないようで起こるできごとを描いている。原題はAbsent in the Spring。

ぼくは本屋のおやじさん

花水木と木香薔薇が咲いて、目に映る街並みが華やいでいる。数年前におとうさんが病を得てから、春が待ち遠しいながらに憂鬱でたまらなかったのだけれど、いよいよ死んでしまって一年あまりを過ぎると、春のしんどさがだいぶ軽くなり、あれはおとうさんのこれからを憂う気持ちだったのだなあと今さら気がつく。ときどきiPhoneのなかのお父さんの声を聞く。なくなってしまったものが手のひらの中で再生される。

ぼくは本屋のおやじさん (ちくま文庫)

ぼくは本屋のおやじさん (ちくま文庫)

  • 作者:早川 義夫
  • 発売日: 2013/12/10
  • メディア: 文庫
 

ブ。

ロックグループをやめ、小さな書店を始めた著者。再び歌手を始めるまでの22年間で学んだ大切なこととは? 置きたい本が入荷しないもどかしさ、客とのふれあい、書店主同士の交流…。歌手・早川義夫の書店主時代の奮闘記。

ブックオフ大学と本屋の本が続いた。ブックオフとはだいぶ趣きの違う本屋の話。表紙の絵は藤原マキつげ義春の漫画をカバーにしていたこともあったらしい。

「この世で一番素晴らしいことは、ふつうであること、と思うようになった」

ブックオフ大学ぶらぶら学部

げんちゃんの歯科健診で虫歯が見つかってしまった。よーく見ると、前歯がとけて欠けたみたいになっている。かわいさに負けて好き放題におっぱいをやっていたのがいけなかった。ちょっと勿体ぶってみたら手をつっこんで引きずり出して飲んでいて、なかなか手ごわい。手ごわいの中にいじらしさがあるのがいけない。やめるのは、そっちなのか、こっちなのか。

ト。

夏葉社の島田潤一郎による個人レーベル「岬書店」からの3冊目。全国各地に店舗を構え、書店でもなく、古書店でもなく、図書館でもない、我々の町にある新古書店ブックオフ。ホホホ座の山下賢二や、BOOKS 青いカバの小国貴司、古書ビビビの馬場幸治ら8名が、ブックオフについて書き下ろしたエッセイや漫画を収録。新刊書籍。

[目次]
武田砂鉄 ブックオフのおかげ
山下賢二 その時、人は無防備で集中する
小国貴司 ブックオフは「暴力」だ。
Z ブックオフとせどらーはいかにして共倒れしたか
佐藤晋 私の新古書店
馬場幸治 ブックオフに行き過ぎた男はこれからもブックオフに行く、そして二十年後も
島田潤一郎 拝啓ブックオフさま
大石トロンボ よりぬき新古書店ファイター真吾

ブックオフの棚の前で感じるときめきがだんだんと目減りしてきた理由がなんとなくわかってしまった。それでも久しぶりに「ブ」したくなる。なんやかんやで一番楽しいのはレシピ本のコーナーで、買うわけではないけれど、辻希美小倉優子の本があるとき何冊も並び淘汰されていくさまに、いまを感じたい。

あとは切手を、一枚貼るだけ

げんちゃんの熱がさがってほっとした翌日にせいちゃんがごほごほやり出し、休みに次ぐ休みで今週はほとんど仕事にならんかった。風邪にアレルギー性鼻炎。みんななんとはなしに冴えない体調を抱えている。休んだ日、うらうらとした天気がもったいなくてふとんや毛布を悉く干す。ふかふかになった厚手の毛布を惜しみながらしまう。冬の名残りとさよなら。とりこんだあとで雷雨がきてどきっとする。ぴかぴかの一年生をそこらで見かける日だった。

あとは切手を、一枚貼るだけ (単行本)

あとは切手を、一枚貼るだけ (単行本)

 

ト。

かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。2人を隔てた、取りかえしのつかない出来事。14通の手紙に編み込まれた哀しい秘密とは…。『アンデル小さな文芸誌』連載を単行本化。

三月の図書館で「手紙」を題材にした本棚が作られていて、そこから手に取った一冊。離ればなれのふたりを淡くつなぐ濃密なことばたち。

暗がりで本を読む

庭にいちごの株をみっつ植えたうちのひとつに、花がついている。白い花びらが落ちたあとに実がふくらんできた。いつのまにかブルーベリーも鈴のようなちいさな花を垂らしている。実家の庭の木蓮が咲いたという知らせが来て、季節は順繰りに巡っていくのだなと思う。

日曜からげんちゃんの調子が悪く、お医者にいって、ずるずるお休み。風邪か突発性発疹だろうという。おひなさまをやっと片付けた。

暗がりで本を読む

暗がりで本を読む

  • 作者:徳永圭子
  • 発売日: 2020/10/23
  • メディア: 単行本
 

ト。根暗なタイトルがいい。

外国文学、日本文学、エッセイ…。ひっそり本屋さんの棚で手にとられるのを待っている本たち。書店店頭に立つ著者が、凛々しく透明感のある文章でさまざまな本を紹介する。『本の雑誌』ほか掲載に書き下ろしを加えて書籍化。

暗がりで本を読んでいて、母によく叱られたことを思い出す。あの頃にはどんな本を読んでいたのか、いまとなってはまったく思い出せない。数年前から、読んだ本の表紙をときどき写真に撮っているのだけれど、過去の本の表紙をみても中身を思い出せないことのほうが多く、残らないという点では一貫性があるらしい。

天使のとき

主義主張というものがあるとするなら、みずからにチュニックを禁じている。チュニックを着るようになったらおしまいだ。いくらチュニックが古代ギリシャ・ローマの由緒正しい語源の衣服だとしても。チュニックはなんたって着る人を選ぶので、生まれ変わって新垣結衣蒼井優(チュニックが似合うふたり)になれたら、そのときには堂々とチュニックを着て町に出よう。

この間、久しぶりにぶらぶらしながら洋服を見 眺めたりしたのだけれど、なにを着ても違和感のある中年期につき、鏡で合わせてもことごとくピンとこない。選ぶことも面倒になってきたところで、一枚だけ気に入ったものが見つかりワンピースを買った。チュニックはだめでもワンピースは良いことになっている。ワンピースはなにも考えずに一枚だけ着れば完結するところもよろしい。せっかく買ったのにもったいなくてまだ着ていない。

天使のとき

天使のとき

  • 作者:佐野 洋子
  • 発売日: 2008/12/05
  • メディア: 単行本
 

ト。

「一生に一度だけ、春画を描きたかった」。著者が遂に刊行を決意した衝撃の家族のシュールな物語。チチとハハはうなぎ丼を食べ、かやの中でまぐわい、アニとイモウトは生まれた。ハハに愛されるアニ、ハハに憎まれる私。ぽいっと捨てられるチチとハハ。話題の『シズコさん』につながるハハとの葛藤をえがき、幼き日々のアニとの幸せな交歓が詩的に表現される。柔らかでエロティックなエッチング12枚つき。

家族のなかに渦巻く残酷さをそのままに。向田邦子が、家族は最悪のところ殺し合わなければいいといっていたのだから、これでいいのだと思う。