まみ めも

つむじまがりといわれます

おかしい話(ちくま文学の森)

おかしい話 (ちくま文学の森)
おかし男の歌(長谷川四郎)/太陽の中の女(ボンテンペルリ)/死んでいる時間(エーメ)/粉屋の話(チョーサー)/結婚申込み(チェーホフ)/勉強記(坂口安吾)/ニコ狆先生(織田作之助)/いなか、の、じけん抄(夢野久作)/あたま山林家正蔵)/大力物語(菊池寛)/怪盗と名探偵抄(カミ)/ゾッとしたくて旅に出た若者の話(グリム)/運命(ヘルタイ)/海草と郭公時計(T.F.ポイス)/奇跡をおこせる男(H.G.ウェルズ)/幸福の塩化物(ピチグリッリ)/美食倶楽部(谷崎潤一郎)/ラガド大学参観記(牧野信一)/本当の話抄(ルキアノス
古今東西のおかしい話をあつめて収録してあるのが、おかしいにも甘いしょっぱいすっぱい苦い辛い・・といろいろあってそのとりどり具合がまた興だった。おかしなことに、牧野信一の作品なんかは、比較的時代のちかい、日本の作家にも関わらず、わたしの脳に微塵も浸透してこないような文章で、文章の主語述語という構造やそれぞれの単語は理解できるのに、エジプトの象形文字でも見せられているような漠とした気持ちにさせられる有様で、まったく、どこがおかしいのやらさっぱりわからないのが、地球を一周して戻ってきておかしいぐらいのものだった。到底わたしと同じ言語を用いているとはおもわれない。いっぽう、ルキアノスは二世紀のシリアの作家で、本当の話というタイトルでありながらまったく大法螺の話なわけなのだけれども、時代も国も隔絶したこっちの作品のほうがまだおかしみがわかるというのがまたおかしい。そんなわけで、おかしなものからおかしくないものまで入って、ひっくるめたまるごとでおかしい一冊。