まみ めも

つむじまがりといわれます

臨月のシガーロス

アゲイティス・ビリュン
いよいよ臨月をむかえる。名前を考えようと、漢字辞典をひらいて、あいうえお順に読みがならんだ索引をひきながら、ぺらりぺらりとやっていたら、「うまれる」の項は生産誕、「うむ」の項は生産娩、それぞれ漢字があてられていて、「うまれる」「うむ」のちがいに思いを馳せていたら、かげろうのアイワズボーンって詩を思い出しちゃった。先週は、おかあさんがころころ餅とお赤飯を準備してくれて、親戚にくばった。つきたてのお餅はすべすべとやわらかく、あかんぼうの肌を想像しながら、おかあさんとそのままかじってみたら、ほんのり塩気があっておいしい。
こちらで時間をもてあましているわたしに、筈氏がCDやらDVDやらサクマ式ドロップスやらを送ってくれて、さながら玉手箱のようでわたしは子供のようによろこびながら荷物をひとつひとつ検分した。そのなかにシガーロスの一枚があった。わたしが、ラジオで流れたナントカいう人の曲がよかった、といって、件のナントカがわからないまんまだったのを、たまたまラジオ局のホームページを眺めていたら、オンエア曲の一覧にJONSIとあるのを見て、やおらひらめいて、調べたところ、シガーロスのヴォーカルの人がその人だというので、もっていたアルバムを送ってくれたとみえる。荷物のなかにはほかに、EBTGとマッシヴアタックとバグダッドカフェのサントラのCDがあって、暗めなので聴きすぎないようにと釘をさすメモが入っていた。筈氏は、まっくらい部屋の中でEBTGを聴きまくった時期などあったらしく、彼もわたしも案外根暗なので、その事実はわたしの腑にすとんと落ちる。そして釘をさされたにもかかわらず、わたしはシガーロスのアルバムが気に入ってしまって、本を読んだり散歩したりミシンをかたかたいわしたりしながらずっと聴いている。おりしもジャケットには天使の胎児が描かれているのだけれども、記憶から欠落してしまった音がよびさまされるような、神秘的で、でも、なつかしいやさしい音。人声や飛行機のジェット音、鼓動の音、いろんな音が入り混じって音楽になり、どこまでが音楽でどこからが現実の音かさかいめがあやふやになり、そのさかいめに揺られているようなここちよさがたまらない。