まみ めも

つむじまがりといわれます

文豪の探偵小説

文豪の探偵小説 (集英社文庫)
有給休暇を余しているので、健診ついでに休むことにして、その日は映画も美容室もと目論んでいたのだったが、息子が折悪しく胃腸炎をやって、夕と朝とにくだして、雪もひたひた降っているしで、その日はふたり家に篭ることにした。翌の土曜に息子を筈氏にまかして健診をすまし、昼はレトルトカレーをあっためて食べたのが、赤いマサラカレーと黒いマサラカレーという代物で、わたしは辛さの弱い黒いのをたべたが、ごまやココアや黒糖を混ぜ込んで独特な甘みを発散しつつもスパイシーであり、汗をたらたら流したあとでなんだか体が冷えてしまった。そのあとずっと胃が重たく、夕方に髪をばっさりやって帰ってから、すっきりしない胃袋にあんかけ炒飯と餃子でとどめをさしたら湯上りに逆上せたようになって、あとから戻してしまった。筈氏も胃がおかしいといって、夜はそのまま早々にねむったが、朝になっても胃がもやついて、りんごをかじり、ハーブティを飲み、昼にようやく雑炊をたべたが、筈氏はというとなにも食べずにねこんでしまった。どうも息子の胃腸炎が家族に一巡したらしい。そんなわけでパジャマ着のまま日曜日をすごしてしまった。
翌朝はりんごとキウイ。実家から送られてきたキウイはかたくてすっぱいので右頬の内側にできた口内炎にしみる。攻撃的でよろしい。近ごろの果物はみかんにしろいちごにしろやたら甘いが、ひとを拒絶するかのようなすっぱいのもいいと思う。恋はよく檸檬に例えられるけれども、甘さと同居するすっぱさ苦さこそが恋の醍醐味かもしれない。わたしの直近の恋は、当初はすげなくあしらわれ苦じょっぱいばかりで甘みなんぞなかったようなものの、その恨みが怨念となって地中深く根っこを張っているのでそうそう思いきれず、とうとう結婚してしまった。いまだに思いだすと汗でぐしょぐしょのシャツのにおいを嗅いだみたいな気持ちになる。
文豪の探偵小説はブックオフで買ったもの。これだけ文豪がなまえを連ねとったら買うしかない。なかでも、泉鏡花、病院の四角い中に鮮血のあかさが際立つきちがいじみた一途な恋の話で、余韻がなかなか出ていかずに留まっている。