まみ めも

つむじまがりといわれます

クラウド・コレクター

新版 クラウド・コレクター (ちくま文庫)
入院中は、24時間のほとんどを、ベッドから離れられない日がつづいた。ごはんもシャワーもトイレも、息子が寝ている隙にあわてて済ます。それでも、戻ってきて、目を覚ました息子がベッドで泣いていると、やりきれない罪悪感におそわれる。初日は簡易ベッドで寝たが、夜に息子が泣くたびに起き上がり、息子のベッドの柵をおろして乳を吸わせ、寝かしつけてまた柵をあげてというのがしち面倒になり、わたしも小児用ベッドにあがりこんで体を折り畳んで寝ることにした。点滴があるので二時間おきに人がやってきてチェックがはいる。看護師さんが気配をころしてスナイパーのようにやってくるものだから、わたしもなんだか起きてはいけない気持ちになり、一生懸命ねむりを演じてみたりして、無用の努力によりいたずらにねむりは浅くなってしまい、疲れたわたしも風邪をひいてしまった。ほんとうなら息子のねている暇に本でも読もうとおもったが、わたしもいっしょに寝込んでしまって、やっと退院前日になってもってきた文庫本をひらく余裕ができた。本はといえば、心地のいい法螺を延々と聴かされているようなファンタジーだった。ときどきセキレイが窓のしたにやってきた。セキレイという鳥の名前は入院中におぼえた。鳥の特徴をキーワードにして検索をかけたらあっさりと名前が判明する。えらい世の中になったもんだ。一度、雄が雌に求愛のダンスを披露して、ふられていた。
息子が退院して、二日してから育休があけ、仕事が始まった。通勤電車の乗車時間はトータル15分、鞄にしのばせた文庫本をひらく。会社では昼休みに机の引出しにしまった単行本を読む。本を読む量は格段にすくなくなったが、みじかい時間にむさぼるように読むのも悪くないとおもう。