まみ めも

つむじまがりといわれます

パーマネント野ばら

日曜のひる過ぎに退院。5日ぶりにお天道様の下にでたら、一挙に夏。
腰が痛いし背中も凝るし骨盤はひらきっぱなし、裂けた傷口の痛みにおっぱいは張り乳首は授乳のたびに血がにじみ、まともにねむれない、体はどこをとってもぼろぼろだけれど、あかちゃんのかわいさというのはそれを軽くチャラにしてしまう。瞳の黒いところと白いところの境い目が、青とも緑ともつかない寒色を帯びて、みつめているとぐんぐん吸いこまれて、こんな底のしれないものをもった生き物を産んでしまったことが信じられないでいる。

パーマネント野ばら (新潮文庫)

パーマネント野ばら (新潮文庫)

入院の荷物には本を4冊いれた。
旅先でビール 川本三郎
パーマネント野ばら 西原理恵子
飛ぶ教室 エーリッヒ・ケストナー
世の中で一番おいしいのはつまみ食いである 平松洋子
「パーマネント野ばら」は産院のそばのブックオフで108円。病室のシングルベッドのピンク色のシーツの上にあかちゃんを連れてきて、残りのスペースでどんな体勢をとってもどこかしらが痛むのをクッションや枕でごまかしながらぺらぺらめくる。あかちゃんが泣いても、寝ていても、なんだかうれしい。文庫本をひらきながら、視界にはいつもあかちゃんがいる。

港町にひとつの美容院、「パーマネント野ばら」。ここは女のザンゲ室。まいにち村の女たちが、恋にまつわる小さな嘘や記憶を告白していく。昨日男に裏切られ泣いたとしても、明日また男を愛しくおもう女の不思議。ずっと好きより、いま大好きの瞬間を逃したくない女の謎。俗っぽくてだめだめな恋にもひそむ、可愛くて神聖なきらきらをすくいあげた、叙情的作品の最高傑作。

ぼろぼろになりながら愛している女たちの群像劇。とにかく切ないエピソードがてんこ盛りで、こころが追いつかないほどの感情がそれぞれにあふれかえっている。愛するって、しんどいなあ。みんなとんでもなくしんどそうだけど、ほんのちょっとうらやましい、でも絶対まねしたくない、まねできない。