まみ めも

つむじまがりといわれます

ペルシャ猫を誰も知らない

ペルシャ猫を誰も知らない [DVD]

西洋文化が規制されるようになったイランで、当局の弾圧の中でも自分の愛する音楽を生み出し演奏する若者たちを描いた青春群像劇。実在するミュージシャンたちが多数出演、無許可でのゲリラ撮影によって、テヘランの今をリアルに映し出した作品。

妹が借りてきた映画。牛舎でヘヴィメタやったり(乳の出が悪くなったとぼやいていた)、廃墟ビルでラップしたり、抑圧のなかでバンドをやる若者たちのピュアな切実さがいい。CDの歌詞カードを読み耽りながら音楽を聴いていた時代を思い出す。あれは、ちょっと必死だったなあ。ルサンチマンに苛まれていた思春期にこそ、音楽のなかでだけ得られる恍惚があった。あんなふうにネガティブな自意識にどっぷりと溺れながら音楽を聴くというのは、これからもうないのかもしれない。CDだって滅多に買わなくなっちゃった。だけど、あの頃の音楽には思いいれがあり過ぎて、思い出したくないようなことも連れてきてしまうので、ちょっとおそろしい。映画では、バンドマンが地べたに座り込んでシチューを食べながら夢を語り合う場面がよかった。「アイスランドに行きたい。シガーロスを見たい。」アシュカンが言った。夢を語るときのちょっと照れたような誇らしげな表情。なんだかものすごくリアルで、わたしはバンドもやったことはないし、彼らみたいな青春もなく、冴えない思春期だったはずなのに、過去の自分を追体験しているようなシーンだった。また、ネガルというコーディネーター役の男が柳沢慎吾みたいな弾丸トークをぶちかまし、どこまで本気なのか最後までわからないのがすごい。若干うざいレベルのネアカなのに、彼がいることが強烈なスパイスとなり映画がものすごくいきいきしていた。