まみ めも

つむじまがりといわれます

トゥルー・クライム

春の濃度が充満してきた。定点観測の白梅が満開になり、めじろが二羽遊んでいる。目に飛び込んでくる色彩が春なので、気持ちも自然と浮かれだす。蝋梅のかおり、たなびく飛行機雲、遊歩道のしたを走っているらしい貨物列車のがたごとする音、よそのうちの夕飯のにおい、菜の花の苦味。一年中見聞きし嗅ぐものにも、どこかしら春が染み込んでいるので油断できない。お風呂でぼんやり髪を洗っている背後に、もう春が佇んでいる。こないだは、春がなんだか倦怠だとおもっていたら、風邪だったが、今度は、ついに花粉症というものになったらしく、目や皮膚がいりいりと痒い。春から厄介な荷物を持たされた気分。ただでさえ停滞気味のパフォーマンスが低下し、本を読みながら頭になじまず頁を行きつ戻りつ、体をぼりぼりやっている。

トゥルー・クライム 特別版 [DVD]

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クリント・イーストウッド特集のときにテレビ録画したものもこれでお終い。死刑執行を控えた死刑囚を取材することになったクリント・イーストウッド演じる記者が、事件に疑問を抱き…というサスペンス。ペイルライダーやガントレットとはちがって、この映画ではマシンガンや銃は出てこないが、煙草やサングラスを使ったハードボイルドな演出に、クリント・イーストウッドの俺様なセンスが見えておもしろかった。それにしても、死刑執行、シリンジから順に薬物が注入されていく場面は、フィクションとはいえ異様な緊張感で、ちょっと見ていられない。薬殺刑についてはよく知らなかったが、ウィキペディアによると、「最初のチオペンタールナトリウム(バルビツール酸系全身麻酔剤)注入で意識を失い、次の臭化パンクロニウム(筋弛緩剤)注入で呼吸を止められ、最後の塩化カリウム溶液で心臓を止められて処刑される」とのこと。それにしても死刑の、取り返しのつかなさは、手に負えない。まえに、ドキュメンタリーで、死刑囚と被害者遺族の関係についてやっていたときに、遺族が、自分も死刑囚も崖のしたに突き落とされて、マスコミや世間はそれを崖の上から眺めている、といっていたが、崖の上にいてもこれだけおののくものを、どう扱ったらよいのだろうという気もする。