「窓辺の君」について。三角公園のそばの家の二階、窓からのぞく壁に大判の写真が飾ってあって、女の子の笑顔がのぞいていた。こないだの冬、セイちゃんは、おーい、バイバーイと手を振って、あの子、バイバイしてくれないんだよなあ、と、写真であることに気づいていなかった。このごろ、夕方に日が落ちてしまって、二階の部屋に電気がともっていることがあって、でも、壁に女の子はいない。いないね、とセイちゃんにいうと、あの写真、なくなっちゃったね、といつのまにか写真だとわかってしまったらしい。「窓辺の君」のお隣さんが顔見知りで、ふと帰り道で会ったときに、セイちゃんが「窓辺の君」の話をした。どうやら「窓辺の君」の家の人はカメラマンをしているとかで、ちいさいときのこどもたちを撮った写真を壁に飾っていたらしい。今度きいてみるね、と小母さんが約束してくれた2日後くらいに、ふと見上げた窓に「窓辺の君」の笑顔が戻っていた。目の悪いわたしにはぼんやりとしか映らないが窓枠を額にして無垢にわらっている。うれしい。
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日本映画を代表する傑作の1本。巨匠・小津安二郎監督が、戦後変わりつつある家族の関係をテーマに人間の生と死までをも見つめた深淵なドラマ。故郷の尾道から20年ぶりに東京へ出てきた老夫婦。成人した子どもたちの家を訪ねるが、みなそれぞれの生活に精一杯だった。唯一、戦死した次男の未亡人だけが皮肉にも優しい心遣いを示すのだった……。家でひとり侘しくたたずむ笠智衆を捉えたショットは映画史上に残る名ラスト・シーンのひとつ。
小津安二郎をはじめてみたのだった。質問返しで延々とおわらない夫婦の会話にただよう老いの悲哀がぐっと迫る。原節子は完璧な未亡人のお嫁さんを演じている。大柄だけれど圧迫感はなく、品があって、とにかくちょっとそこだけすごく鮮やかな花の蕾がひらきかけているような控えめなゴージャスさがあって、いつまでも眺めていたい。