まみ めも

つむじまがりといわれます

あひる

仕事を早上がりして鎌倉の駅につき、少し時間があったのでうろうろしていたら、たらば書房の向かいのビルのテナントにヨーロッパ古着を扱う小さな店をみつけて、勢いでワンピースを一枚買ってしまった。フランスの半世紀ほど前のもので、生成色に刺繍がしてある。かわいらしすぎるとも思ったけれど、刺繍のひかえめな生地が気に入って、試着をしたらぴったりで、店の人も、アームホールが小さめで、なかなか着られるひとがいなかった、やっと着られるひとが現れた、なんていうので、調子にのってしまった。ビンテージものなので、生地がところどころすり切れているのも好ましい。セールで30%オフだった。すり切れている上に値下げされていると、なんだかひとごととは思えない。どこがすり切れて値下げされているわけでもないけれど。

あひる

あひる

ト。

あひるを飼うことになった家族と学校帰りに集まってくる子供たち。幸せな日常の危うさを描いた表題作と、揺れ動く子供たちの心の在りようを鋭く描く「おばあちゃんの家」「森の兄妹」の全3編を収録。
あひる p5-63 
おばあちゃんの家 p65-94 
森の兄妹 p97-140 

「こちらあみ子」の今村夏子。あみ子のときに、読んでいて、傷つくのではなく傷つけているから苦しい、ということを思ったけれど、やっぱり今村夏子の本を読んでいると自分はひとを傷つけるのだなあと思ってしまう。今村夏子はなにも持たない半分透明な存在をきちんと見つめている。うっすらと無視されながらしなやかに生きているものたち。そこにただそのものとしてある純粋さに懐かしいような苦しいような疼きを味わう。