まみ めも

つむじまがりといわれます

図書館奇譚

げんちゃんのクリスマスプレゼントはおやすみアンパンマンだった。手のボタンをぎゅっと押すとアンパンマンのほっぺがあかく光って「そろそろねるじかんだね」「いっしょにねようね」なんて声をかけてくれる。戸田恵子の声がすごく心地よくて、何度も押してしまう。げんちゃん、アンパンマンのあくびの真似が上手になった。このあいだ、アンパンマンの顔のかたちをしたパンをもらったら、ほっぺからかぶりついていた。アンパンマンの中身はクリームだった。アンパンマンの餡をきらしてクリームを詰められたクリームパンマンの脱力した顔を思い出す。

図書館奇譚

図書館奇譚

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2014/11/27
  • メディア: 単行本
 

ト。

図書館の地下のその奥深く、羊男と恐怖と美少女のはざまで、ぼくは新月の闇を待っていた。「カンガルー日和」所収の名短篇を改稿し、ドイツの気鋭画家によるミステリアスなイラストを添えて収録。

最寄りの図書館に地下室はあるかないか知らないけれど、うえにはプールがあるらしい。使われているのかどうかはわからない。プールのにおいがしてきたこともなく上り口の階段は鎖で遮られていて、幻のプールだ。夏、プールのあとにクーラーのきいた図書館で昼寝できたら気持ちいいだろうなとときどき思う。

銀のくじゃく

週末にお誕生日を祝ってもらった。スーパーで肉とピザを買い込み、ピザを落としそうになりながら、ふみちゃんとキャーキャー言って自転車で持ち帰る。ラムチョップとスペアリブを焼いて、みんなでかぶりつく。食後にいちごのショートケーキ。おたんじょうびおめでとうの名前入りプレートがうれしい。こどもたちはそれぞれにプレゼントを用意してくれた。せいちゃんは、いろんな色と形の花の折り紙。ふくちゃんは、折り紙でハンバーグのプレートにおかずを添えたものを作ってくれた(ウインナーにきちんと切り目がいれてある)。いつもやさしいおかあちゃんおりょうりがじょうず、と書き添えてある。ふみちゃんは、家のそばでお花を持っている絵と、手紙を書いてくれた。おかあちゃんおたんじょうびおめでとうきょうかたもむからねいまここにぷれぜんとがあるよもうおしまいにするからね。ひらがなを覚えたばかりでところどころまちがっている。でも解読できた。それぞれに最高の贈りものを用意してくれた。ずっとここにいたいと思ってしまう。

銀のくじゃく (偕成社文庫)

銀のくじゃく (偕成社文庫)

  • 作者:安房 直子
  • 発売日: 2017/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

ト。

くじゃく姫のために織った銀のくじゃくに、体も魂も吸い取られてしまったはた織りの話が表題作。自分を愛してくれる人の訪れを待ちきれなくて小鳥になってしまった少女の話など、寂しい心のあこがれを込めた短編集。

銀のくじゃく

緑の蝶

熊の火

秋の風鈴

火影の夢

あざみ野

青い糸

おはなしを読みたくなって、安房直子を借りる。安房直子を読むと、世界には素敵な秘密がたくさん隠れているんだということを信じられる気持ちになる。

短歌ください 君の抜け殻篇

連休明けにひとつ歳をとった。1949年生まれの村上春樹と1988年生まれの木下龍也にはさまれているので、サンドイッチでいえば具に当たる。身にあまる光栄です。最近はツナマヨと人参サラダのサンドイッチばかり食べている。年明けからすでに人参一本ぶんをサンドイッチにした。ヘンリーくんシリーズに出てくるラモーナがサンドイッチのことをサミッジというので、いちいち脳内でサンドイッチをサミッジと変換してしまう。サミッジたべるんだあーい。

誕生日の前の日は、ひとりの時間をもらって往来をぶらつき、ロイヤルホストでりんごのパフェを食べてココアを飲み、冷凍のコスモドリアを買って帰った。誕生日ははじめての在宅勤務で、雪のちらつく寒さで底冷えがしんどく、一日でしもやけができた。お昼はコスモドリアをとことんあつくしてはふはふしながら食べる。園の保護者で陽性者が出たとかで、濃厚接触者になるであろうその家の子と濃厚接触者になるかもしれないうちの子の濃厚接触者であるわたくしは、はっきりするまで出社は控えて在宅勤務を続けろということになった。起きたままの姿で毛布にくるまりながら一日中パソコンの前でぽちぽちやっている。通勤の往復に本を読む時間だけがすっぽり抜けた。

ト。

昭和、外国、憧れ、忍者、遠足、敵…。『ダ・ヴィンチ』の読者投稿コーナーに寄せられた短歌から、人気歌人穂村弘がテーマごとに傑作を選出。それぞれの短歌に鮮やかな講評を付す。

生きていく理由はいくつおつけしますか?産まれた意味はあたためますか?栗原夢子

穂村弘が思ったよりだめじゃない人なのではないかという気がしてくる。だめじゃないやつはだめだ、と思っていたけれど、最近自信がない。

ともだちの話

仕事始めの五日に、仕事帰りに寄った駅前の八百屋で、人参と茄子を買い物かごに入れてレジにショップカードをかざしたらハッピーバースデーのメロディが流れた。誕生日の前後にいくと鳴るらしい。レシートとは別に、名前とお誕生日おめでとうと印刷された一枚の紙が出てきたのをパートのレジうちの女の人から渡された。今年のお誕生日を誰よりも早く祝ってくれたのは、八百屋だった。帰り道の足取りが少しだけ軽くなる。

5ともだちの話 (小学生までに読んでおきたい文学)

5ともだちの話 (小学生までに読んでおきたい文学)

  • 発売日: 2013/10/29
  • メディア: 単行本
 

ト。

吉行淳之介子供の領分」、ヘッセ「クジャクヤママユ」など、小学生までに読んでおきたい、ともだちの話を収録。小学5年生以上の漢字にルビをふり、見やすい図版入り脚注を付ける。松田哲夫による解説も掲載。

友だち 星 新一

画の悲み 国木田 独歩

故郷 魯迅

納豆合戦 菊池 寛

牛乳時代 中島 らも

クジャクヤママユ ヘッセ

子供の領分 吉行 淳之介

シシフシュ ボルヒェルト

みちのく 岡本 かの子

ある小さな物語 モルナール

苺の季節 コールドウェル

ボライ タゴール

菊の花 中野 重治

堅固な対象 V.ウルフ

自分と世の中が映る不思議な鏡-解説- 松田 哲夫

年末にいったよその町の図書館で児童書コーナーで選んだ一冊。セイちゃんと一緒に読む。小学生までに読まなかった話ばかりだったけれど、生きてるうちに間に合ったのでよかった。

ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前

家族だけで家で年末年始を過ごすのははじめてのことで、すっかり気が緩んでみんなしてねぼすけの寝正月を満喫した。年の瀬に鎌倉からおせちの材料をあれこれ送ってもらい、雀の絵付けのお皿に紅白のかまぼこ、伊達巻に昆布巻き、栗きんとんや黒豆やかずのこを並べてそれらしくした。お雑煮だけは用意した。母のお雑煮はするめいかの出汁だったけれど、用意がないので、うどん出汁のようなものを作って餅を浮かべる。柚子の皮と三つ葉とあさつき、お土産でもらった金箔をのせた。シンプルな雑煮が一番うまいと思うけれど、たしかに雑煮の雑の部分はまったくない。

ついたちは近くのイオンに出かけたらバスタオルが廉売で、五枚も買って帰った。バスタオルを漁っていたら知り合いのお母さんに声をかけられ、ふたりしてタオルをあさりながら新年の挨拶をする。中年が板についてきた感じのエピソードでいい一年のスタートだと思う。

ト。

「女には無理」と断られた照明係の仕事を、重いコードを毎日百回引きずって獲得したパンクな舞台美術家と作家の交流を描く「ヒナギクのお茶の場合」など、言葉とユーモアで境を超える全米図書賞作家の傑作9篇を収録。

ヒナギクのお茶の場合

枕木 p9-33

雲を拾う女 p34-85

ヒナギクのお茶の場合 p86-119

目星の花ちろめいて p120-134

所有者のパスワード p135-151

海に落とした名前

時差 p155-188

U.S.+S.R.極東欧のサウナ p189-225

土木計画 p226-241

海に落とした名前 p242-311

海に落とした名前、よかった。たしかにここ一週間の自分を雄弁に語るのはレシートの束かも、きょうは古いレシートを捨ててきたのでまっさらなわたし。

黄色い雨

年内にすべりこみで美容室にいく。ばさばさになってタイトルをつけるなら「生活に疲れた中年女性」でしかない頭を軽くしてもらい、さっぱりした。生活に疲れながらなんとかやっている中年女性になったと思う。そのあとドーナツショップでダブルチョコレートとカフェオレでひと休み、買い物を済ませて帰る。蒲鉾がここぞとばかりに売り場を広げて値上がりし、一年の帳尻を合わせようと追い上げている。ついでに焼き豆腐が軒並み売り切れていて、年の瀬はみんなすき焼きをやるらしい。うちもすき焼き肉をもらい、ねぎとしらたきはあるけれど、焼き豆腐のピースだけが欠けている。

黄色い雨 (河出文庫)

黄色い雨 (河出文庫)

 

金木書店。108円。

夜が、あの男のためにとどまっている。闇に閉ざされたアイニェーリェ村で、いったい何が起こったのか? スペインから彗星のごとく出現し、世界に「冷たい」熱狂を巻き起こしつつある奇蹟の小説。

結末がみえていながら光にあふれたお話だった。

ヘンリーくんとアバラー

仕事納めの朝、遊歩道の梅の白いつぼみがひらいている。通勤のいつもの電車はひとが疎ら。乗り換えの駅で毎日脱兎のいきおいで駆け出してくるひとたちも今日はいない。彼らは師走の師ではなかったらしい。なんとなくのんびりした気持ちで仕事にいく。

昨日はスケジュールがブランクだったので、仕事にでかけるふりをして会社には休みの連絡をいれ、コーヒーショップでシナモンロールとコーヒーを頼み、本をぺらぺら読み、少し足を伸ばしてはじめての図書館にでかけ、本で重たくなったかばんを抱えて買い物をして帰った。一年なんとか無事だった。

ト。

ヘンリーくんの飼い犬アバラーは、行くさきざきで面倒な騒ぎを起こし、ヘンリーくんはうんざり。念願のサケ釣りに連れて行ってもらったヘンリーくんは、アバラーのおかげで…ときにはよいことも! ヘンリーは今日もまた、なにかおもしろいことができないかなあと考えています。かい犬のアバラーのえさを買いに、おとうさんと出かけていると、おとうさんは、9月にサケつりに行くことを教えてくれました。ヘンリーもつれて行ってもらうやくそくをしました。でもそれまでに、またアバラーがいろんなことをしでかしてしまいます。

アバラー、ガソリンスタンドへ行く p5-43

ヘンリーと台所のごみ p44-91

ヘンリーのさんぱつ p92-126

ヘンリーの犬歯 p127-147

ラモーナとPTA p148-188

アバラー、つりに行く p189-224

ヘンリーのぼうけん p225-251

前に読んだのは2018年の年明けで、三年近くたって二度目だというのに、あんまり話を覚えていなかった。ヘンリーのぼうけんでグッときて、昼休みにデスクでうるうるしてしまった。何度でもグッとしようではないか。