まみ めも

つむじまがりといわれます

わたしが行ったさびしい町

歯医者の予約が平日にしか取れないので、なけなしの有給休暇を取得。これからの自分にもやもやと思うところがあったのだけれど、同期の男の子がいいタイミングで背中を押してくれ、資格試験に挑戦しようという気になった。とにもかくにも学会に登録せねばならず郵便局で諭吉一枚を払い込む。図書館と八百屋にいき、バナナとりんごをぶら下げて歯医者へ。奥歯にできた虫歯を、キュインキュイン、ぎゅるぎゅる、ぴ、ぴ、と手を替え品を替えでやってもらった。

わたしが行ったさびしい町

わたしが行ったさびしい町

 

ト。「さみしい」で検索したら出てこなかった。松浦寿輝は「さびしい」なのだな。川上未映子は「さみしい」の印象。淋しい熱帯魚は、さびしいなのか、さみしいなのか。

泡粒のように浮かんできては消えてゆく旅先の記憶。ペスカーラ、名瀬、シャトー=シノン、台南、トラステヴェレ、コネマラ、タクナ、長春、中軽井沢……。日常を離れた旅の途上で、人は凝り固まってしまっていた観念や思い込みを脱ぎ捨て、心も躯も身軽になる。こんな時代だからこそ読みたい、活字で旅する極上の20篇。

ナイアガラ・フォールズ
ペスカーラ
イポー
名瀬
ヴィル=ダヴレー
ニャウンシュエ
タクナ
上野
シャトー=シノン
長春
上田
台南
コネマラ
パリ十五区
江華島
トラステヴェレ
アガディール
ドーチェスター
中軽井沢
夢のなかで行った町
あとがき

どこにもいけないかわりに本の中でいろんなところへ行き、借り物のさびしさを思う存分味わった。

 

ヘンリーくんと秘密クラブ

数年ぶりにバリウムをやる。毎度ながら、飲むバリウムの重さ多さと検査の長さ、どんだけ動けば終わるんだいう点も記憶のなかのバリウム検査を凌駕してくれる。汗だくで終えて、下剤の腹いたで眠れない夜をやり過ごす。

しばらく前から鼻水がのどに流れおちる感じがあって、どうも副鼻腔炎であるらしい。湯船につかっているときに顔面の奥にずーんと重痛さがやってきた。クラリスをしばらく飲んだけれど全快には至らず低空飛行。

ヘンリーくんと秘密クラブ 改訂新版

ヘンリーくんと秘密クラブ 改訂新版

 

ト。ここでついにあとから再読しはじめたせいちゃんに抜かれる。

車庫をこわした後の古材木を見つけて、小屋をつくることを思いついたヘンリーくん。友だちと3人でりっぱなクラブ小屋をつくりあげ、得意満面。ところが、またしてもいたずらラモーナのために…。

ヘンリーくんの辟易にはごめんやけどラモーナがしっちゃかめっちゃかなことをやるたびにいいぞいいぞもっとやれとけしかけてしまう。

そんなふう

ふーちゃんに付き合ってもらって大豆田とわ子の録画を消費した週末。松たか子があまりにチャーミングで松たか子になりたいとそればかり考えてしまう。着こなしも素敵だし、歌声もいいし、完璧だ。次に髪を切るときは松たか子でいくと密かに決意する大豆田とわ子、じゃなくて。

そんなふう

そんなふう

  • 作者:川内倫子
  • 発売日: 2020/10/17
  • メディア: 単行本
 

ト。

子どもと一緒にいると、すれ違う人によく笑いかけられる。初めて会った、ただすれ違った他人と距離がぐっと縮まり、ふわりとあたたかい空気が流れる…。写真家による、出産と育児の記録。『Fasu』ほか掲載を加筆し書籍化。

あかちゃんのにおいがするような写真たち。取り返しのつかない日々が切り取られている。

天才による凡人のための短歌教室

げんちゃん、よく喋るようになった。たまねぎとたまごが好きだけど、どっちもまたねぎ、またご、という。たまごを割るときに、こんこんぱかするよ、というと台所までやってきてのぞきこみ、もういっかい!もういっかい!とおだててくれる。

庭に植えたいちごは季節を過ぎてしまいひとりにふた粒程度で終わりそうな気配。苗を三つ植えて、一つにしか花が付かなかった。枝だけに切り落とされていたあじさいがいつのまにか小さな花をつけて、まわりから咲いている。トマトとブルーベリーはこれから。

天才による凡人のための短歌教室

天才による凡人のための短歌教室

  • 作者:木下龍也
  • 発売日: 2020/11/14
  • メディア: 単行本
 

ト。

「最高の一首をつくるのは僕ではない。 この本を開いたあなただ。 あなたという短歌の天才が目の前に立ちはだかる日を、僕に参りましたと言わせてくれる日を、僕は待っている。」 木下龍也が創作のすべてを伝える短歌教室。開催すれば毎回満席となるこの講義が大幅な加筆と書き下ろしを加え一冊になりました。短歌をつくる技術はもちろん、アイデアの発想法、歌人としての生き方、短歌とお金などなど、、、短歌って何ですか? という方から楽しめる新たな「文章読本」の登場です。

表紙は渋谷を往来する人たちで、みんなマスクをしているのでコロナ以降の世界だということが知れる。これから世界はどうなってしまうのか。自分はなにを選び、なにを選ばないのか、ということが、わりとシビアになっていく予感だけがある。

東京美女散歩

ふーたんが、園でオズの魔法使いの劇を見て以来、脳のことをおみそと呼ぶ。ちゃんと頭におみそ入ってるかなあ?なんていうのがツボで、そのままずっとおみそと呼んでいてほしい。兄の家のトイプードルは、兄の名前から一字とってコテツというのだけど、トイプードルをみかけるたびにコタツににてるね!というのもそのままでお願いします。

そんなふーたんは、せいちゃんの誕生日に自転車にのれるようになった。もうこげなかった世界には戻れない。後戻りのできない時間を生きているということをときどき思い知る。

東京美女散歩 (講談社文庫)

東京美女散歩 (講談社文庫)

  • 作者:安西 水丸
  • 発売日: 2018/12/14
  • メディア: 文庫
 

ブ。

日本橋を渡り、かつて焼け落ちた白木屋に思いを馳せ、墨田川沿いで美女にたばこの火を拝借。都心の花街・荒木町で耳に届く粋な三味線の音。両国で元小結の息子が作るカツカレーを堪能し、目黒では、五百羅漢の言葉に首を垂れる。歴史の横顔。ほろ苦い別れ。東京をこよなく愛した著者がそぞろ歩く、艶なる街々。(※本作は、2015年3月に小社より刊行された単行本から、東京二十三区内の回を選び、文庫化したものです。)

図書館に世田谷文学館安西水丸展のチラシがあって、お、でも都内までいけないなあと思っていたけれど、コロナで休館になってしまっている。水丸印のグッズを心ゆくまで買い漁りたい。そんな煩悩をなだめるためにブックオフで買ってあった水丸本を取り出す。村上さんがきいたらやれやれと言うだろう、という場面が三回ほど出てくるのがおかしい。村上春樹ほどやれやれが似合う人はおるまい。読んでいたら新宿中村屋のカレーがうまそうなので、レトルトを買って食べた。

おもろい以外いらんねん

三日はせいちゃんの11歳の誕生日。焼肉と桃缶のケーキのリクエスト。どんと来い。昼間は一日サッカーで、バースデーゴールを決め、ベンチからおめでとうの声がかかったという。プレゼントはボードゲームカタン。夜はとことん肉を焼き(1.5キロ)、みんなでハッピーバースデーを歌い、ケーキを食べた。名前にふさわしくよく晴れた日だった。

おもろい以外いらんねん

おもろい以外いらんねん

 

ト。

幼馴染の咲太と滝場、高校で転校してきたユウキの仲良し三人組。滝場とユウキはお笑いコンビ<馬場リッチバルコニー>を組み、27歳の今も活動中だが――。優しさの革命を起こす大躍進作。

純粋なおもろいの世界を、これからの人たちがつくっていく。

日の名残り

火曜の帰り際に電話がぶるぶるし、げんちゃんがおなかを下しているという。そのままお迎えから病院に連れて行き、中一日ではおさまらず、金曜日は保育園をやすませて昼で仕事にあがりそのまま大型連休に突入。連休初日は一年振りのサンダルを履いて三か所に靴擦れを作った。

ト。

短い旅に出た老執事が、美しい田園風景のなか古き佳き時代を回想する。長年仕えた卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々……。遠い思い出は輝きながら胸のなかで生き続ける。失われゆく伝統的英国を描く英国最高の文学賞ブッカー賞受賞作。

三月の文庫本特集の本棚にカズオ・イシグロがあって迷わず手に取る。読み進めるうちに募るもやもやを丸谷才一の解説が一挙に回収してくれる。解説が小説を見事に昇華させる一冊だった。