まみ めも

つむじまがりといわれます

数えないで生きる

相変わらずどこにもいけない週末なのでプリンを作ろうとカラメルを煮たらガラスの器がぱき、と音を立ててふたつに割れた。カラメルがどんどんかたまるのでそのまま新聞紙にくるんでゴミ袋にしまう。皿が割れるのはいかにも取り返しがつかなくて、取り返しのつかない日々を生きていることに否応なく気づいてしまいしばらく呆然とする。ちょうどよい大きさの皿がなくて、薄っぺらいプリンが焼けた。余った卵白ふたつぶん。

ト。

危機が過ぎ去るまであと何日か。ノルマは達成したか。あと何日生きられるか。人生を数えてみても自分の思う通りにはならない。哲学者が考えを深めた末に辿り着いた「日々を価値あるもの」にするためにできることを綴る。

「何かができてもできなくても、人間の価値はそのことには関係がない」懐の深いことばたちに触れた。

機嫌がよいこと、丁寧なこと、親切なこと、寛大なこと、等々、幸福はつねに外に現われる。歌わぬ詩人というものは真の詩人でない如く、単に内面的であるというような幸福は真の幸福ではないだろう。幸福は表現的なものである。鳥の歌うが如くおのずから外に現われて他の人を幸福にするものが真の幸福である。

三木清「人生論ノート」

氷点

サザエさん症候群がそろそろという日曜の昼下がりに保育園から休園の知らせがはいった。新学期のオンライン授業とやすみの園児と在宅勤務で、リコーダーでチャルメラが鳴るしキャッチボールははじまるしお外にいきたいと泣かれるし。昼はインスタントヌードルとカレーの切り札を早々と使ってしまい明日はどうしようと思っていたら保育再開の知らせがきてほっとしたところ。

妻・夏枝が逢い引きをしている隙に3歳の娘を殺害された辻口は、夏枝への復讐のために、密かに当の殺人犯の娘・陽子を養女にする……。

兄・徹の友人・北原と愛し合うようになった陽子。しかし母・夏枝は北原にゆがんだ愛情を持ち、2人に陽子の出生の秘密をぶちまけてしまう……人間存在の根源に迫る不朽の名作。

Fさんの本。

ドラマの展開がものすごくて一気読み。三浦綾子曽野綾子が整理されないまま頭の中にあるのだけれど、夫が三浦なのが曽野綾子でやっぱりややこしい。

銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件

玄関先の桜の葉が黄色くなって散っている。さるすべりの花も落ちる。ふわりでもなくひらひらでもなく音もなく花がすうっと墜落する。ふーたんが、あ、と声をあげて窓際に走り寄って、落ちる花をじっと眺めていた。

ト。

ある日、カナダの銀行に紫色の帽子をかぶった強盗がやってきた。彼はその場にいた十三人から“もっとも思い入れのあるもの”を奪い、去り際にこんな台詞を残した。「私は、あなたがたの魂の五十一%を手に、ここを立ち去ってゆきます。そのせいであなたがたの人生には、一風おかしな、不可思議なできごとが起こることになるでしょう。ですがなにより重要なのは―その五十一%をご自身で回復させねばならぬということ。さもなければあなたがたは、命を落とすことにおなりだ」その言葉どおり、被害者たちに奇妙なことが起こりはじめる。身長が日に日に縮んでしまったり、心臓が爆弾になってしまったり。母親が九十八人に分裂した男性もいれば、夫が雪だるまに変身した女性も…。いったい、なにがどうなっているのか?

七月の図書館の企画がなんだったのか忘れてしまったけど、棚の中に鮮やかなイエローの表紙とむちゃくちゃなタイトルが目にとまって借りた。タイトルのフォントもいい。やっぱりむちゃくちゃな話だった。

図書館の外は嵐

げんちゃん、よく喋るようになった。おやすみが言えなくて「おちゅみー」となるのがかわいくて、家族みんなしておちゅみーでおやすみの挨拶をする。ごちそうさまでしたはおててーた、たべるはぱえる、だめはまめ。いつまでもこのままでいてほしいと思いそうになる。

おっぱいの飲みすぎで虫歯になり、歯が溶けてしまい、おっぱいはよしたものの、はなれがたいらしく、寝起きや寝入りばなはずっとおっぱいをまさぐっている。寝返りをうちながら乳首をつまみ続けるので、ひねりが入り、しぼんだおっぱいが小籠包みたいになっている。

ト。

登場人物が3人のミステリー、「おなみだぽいぽい」という絵本、百年前のディストピアSF…。穂村弘が、自身の心をとらえて離さない幅広いジャンルの本を丁寧に読み解く。『週刊文春』連載をまとめて単行本化。

目次 : 「わたしたち」と「ぼくら」/ 奇蹟の新作たち/ 異形の「生活の知恵」/ 最高の告白/ アイデンティティの謎/ 「いい感じ」の作家/ 不可思議の理由/ 「気絶人形」たちの歌/ ほんとうの夏休み/ 追い越された未来/ 鏡の中のなぞなぞ/ つげ義春の魔力/ 世界を更新する眼/ 蟻の街見たし/ 「二二んが四」を超えて/ アウトサイダーの輝き/ 多佳子と三鬼と清張/ メタの鍵を持つ作家/ 大島弓子の単行本未収録作品など/ 少女たちの声/ 誰かが誰かを捜す物語/ 「クラムボン」の仲間たち

ジャケ買いならぬタイトル借り。図書館で読書日記ときたら読まないわけにはいかない。

雨天炎天

平野紗季子とイナダシュンスケの強力タッグでロイホのプレートを売り出してくれないかと思っていたら、平野紗季子が企画したのはプレートではなくてフーディとTシャツとトートバッグだった。そうきたか。どれかひとつくらい買わないとロイホの賢いカスタマーとはいえないのではないか。重度のカスタマーを気取りたいからネイビーのフーディにしようかな。

F本。

「女」と名のつくものはたとえ動物であろうと入れない、ギリシャ正教の聖地アトス。険しい山道にも、厳しい天候にも、粗食にも負けず、アトスの山中を修道院から修道院へひたすら歩くギリシャ編。一転、若葉マークの四駆を駆って、ボスフォラス海峡を抜け、兵隊と羊と埃がいっぱいのトルコ一周の旅へ――。雨に降られ太陽に焙られ埃にまみれつつ、タフでハードな冒険の旅は続く!

ギリシャ
アトス――神様のリアル・ワールド
さよならリアル・ワールド
アトスとはどのような世界であるのか
ダフニからカリエへ
カリエからスタヴロニキタ
イヴィロン修道院
フィロセウ修道院
カラカル修道院
ラヴラ修道院
プロドロムのスキテまで
カフソカリヴィア
アギア・アンナ――さらばアトス
トルコ編
チャイと兵隊と羊――21日間トルコ一周
兵隊
パンとチャイ
トルコ
黒海
ホパ
ヴァン猫
ハッカリに向かう
ハッカリ
マルボロ
国道24号線の悪夢
国道24号線に沿って

本好きのFさんと何冊か本を交換して読んでいる。今回借りた本。

雨天炎天 村上春樹

急行「北極号」 C・V・オールズバーグ

氷点 上・下 三浦綾子

ハサミ男 殊能将之

十角館の殺人 綾辻行人

まずは雨天炎天を。ワクチン副反応後にルクミを食べたらかなりよかったんじゃないか。黒海の沿岸で冷麦を食べるところがいい。

黒海の沿岸で冷麦を食べる 冷麦というのはどことなく奇妙な食べ物である。どこで食べてもーー日本以外のどこで食べてもということだがーーはるばる遠くまできたんだなあという気がするのだ。

西伊豆なんかで食べても、はるばる感がしそう。いつか黒海のほとりにいくことがあれば、雨天炎天と冷麦を旅行鞄にいれようと思う。

むしろ、考える家事

短い夏休みに合わせて雨模様になり、降りこめられてスペシャルがなにもないまま終わる。毎日がスペシャルなんて歌える竹内まりやがうらやましい。すこしでもスペシャルを演出するためにテイクアウトのピザと冷凍餃子を買ってきて、カルピスと一番搾りで乾杯をした。酔っ払った心地で布団にもぐりこみ体温がなじんでくるといつまでも眠っていられるちょうどよい涼しさ。夏はどこへ。

ト。

家事“に”革命ではなく、家事“で”革命を起こそう! 家事をしながらいろいろ考えた、新しい視点の家事レボリューションエッセイ。『レタスクラブ』連載を加筆修正、再構成して単行本化。

山崎ナオコーラってすごくいい人なんだろうな、と完全にひとごとになって読んでしまった。

ゆうかんな女の子ラモーナ

炎天を歩いてワクチンを受けに行った翌日は副反応と多い日が重なりぐったりと横になって一日を過ごした。悪寒、倦怠感、発熱にモデルナアーム。冷凍庫からスーパーカップ超バニラを出して食べ、夕飯も食べる気にならずそのまま寝て、起きてみたらうっすらとした頭痛だけが残っていた。今日から短い夏休み。降り続く雨でどこにもいかずに終わる予定。副鼻腔炎と副反応の名残りですっきりしない体調にお似合いの空模様。

ト。

年上の男の子にだっておそれずに向かっていくようなゆうかんな女の子ラモーナが、いよいよ小学校にあがります。でも、はりきって出かけた入学1日目から、ちょっとしたさわぎをおこしてしまいました。それは「何かお話ししたい人いますか?」という先生の言葉にラモーナが手をあげたことからはじまり…。

ふくちゃんに周回遅れで読んでいるヘンリーくんシリーズはいつのまにかラモーナが主人公。みんなとにかくいきいきしていていじらしい。