まみ めも

つむじまがりといわれます

数えないで生きる

相変わらずどこにもいけない週末なのでプリンを作ろうとカラメルを煮たらガラスの器がぱき、と音を立ててふたつに割れた。カラメルがどんどんかたまるのでそのまま新聞紙にくるんでゴミ袋にしまう。皿が割れるのはいかにも取り返しがつかなくて、取り返しのつかない日々を生きていることに否応なく気づいてしまいしばらく呆然とする。ちょうどよい大きさの皿がなくて、薄っぺらいプリンが焼けた。余った卵白ふたつぶん。

ト。

危機が過ぎ去るまであと何日か。ノルマは達成したか。あと何日生きられるか。人生を数えてみても自分の思う通りにはならない。哲学者が考えを深めた末に辿り着いた「日々を価値あるもの」にするためにできることを綴る。

「何かができてもできなくても、人間の価値はそのことには関係がない」懐の深いことばたちに触れた。

機嫌がよいこと、丁寧なこと、親切なこと、寛大なこと、等々、幸福はつねに外に現われる。歌わぬ詩人というものは真の詩人でない如く、単に内面的であるというような幸福は真の幸福ではないだろう。幸福は表現的なものである。鳥の歌うが如くおのずから外に現われて他の人を幸福にするものが真の幸福である。

三木清「人生論ノート」