まみ めも

つむじまがりといわれます

卒業

卒業 [DVD]
午前十時の映画祭のコマーシャルでスポット的にラストシーンだけは見ていた。ダスティン・ホフマンが花嫁と逃げ出す例のシーン。なんとなくこてこてのラブストーリーだろうとおもって気楽にかまえていたが、とんでもない映画だった。初恋のきた道は定石をすべてふまえたラブストーリーだったが、卒業はどこか気ちがいじみたラブストーリーで、途中から妙にねじれた気分になってしまった。はじめはモラトリアムな憂鬱から抜け出せないで周囲との隔絶をかんじているダスティン・ホフマンに同情してみたが、なんだか奇妙だと思いはじめたらどんどんと加速、ノンストップで常軌を逸して突っ走っていくのでわらってしまった。ジェットコースターみたいな男だ。こんな童貞くさい男が大学でホープだったというのも信じがたいし、エレーンがころっと参ってしまうのも意味がわからんが、そもそも世の中の恋愛沙汰に意味なんてないのだった。おたがいが名前を呼びあって納得しちゃった以上それはそれでアリとするしかない。わたしもいま考えると頭がおかしかったとしか思えないようなのをやったし、頭がおかしかったとしか思えない相手もいた(いまだって頭がおかしいといわれればそうかもしれない)。狂気じみた展開とサイモン&ガーファンクルの音楽、時折あらわれる水中のシーンに、屈折した世界がありありして、登場人物はそろいも揃っておかしいのに、見る側だけは正気の視点に固定されておもしろい。エレーンもベンも、教会から逃げだしたそのときだけは笑顔がはじけるが、バスに乗ったあとでは視線もあわせずにしんとした表情になる、ラストシーンにはえらいリアリティが詰まっていた。ふたりの青春の泡はあそこではじけてしまった。ジェットコースターの余韻なんてそんなもんだ。
中学の学芸会で卒業をやったという夫氏が、僕は教会の場面のイエス・キリストをやったからそこに注目するようにと言っていたので、注意していたつもりだったが、ダスティン・ホフマンがエレーン!とさけぶシーンで爆笑してしまい見逃したとおもって再生しなおしたが、やっぱりイエスさまは見つからなかったし、二度目もやっぱりエレーン!にわらってしまった。いつかどこかで真似してみたい。