まみ めも

つむじまがりといわれます

妊娠小説

妊娠小説 (ちくま文庫)
2011年の暮れにみた夢は、のっぺりとした殺風景な部屋の壁に富士山がくっきりとそのシルエットの陰影をおとし、部屋のなかに紐かなんか渡っておるのに鳥がとまっているのが、丁度富士山のかげの天辺にぴったりしているというそんな映像で、目が覚めたときにまずしくじったと思った。鳥は市井にあるような鳩か雀かという按配で一富士二鷹とはいかないもののどう考えたって縁起がよい。しかし年の瀬。それで、おんなじ夢をもっぺん見ようと念じながら元日の夜に眠りについたところが、その夜にみた夢では、気球で夕暮れの空を降下していてぼちゃりと落ちた先はロシヤ領海なので、それというのは海がプールのような遠浅で底にラインをひいてロシヤであることを示してあった。ざぶりざぶりと波をわけてロシヤに上陸したあたりで目が覚めて、トイレにいき、またねむりについたのでその夢のことはすっかり抜け落ちてしまっていたが、ふつかの夜に湯に浸かっていたら夢の情景がぱっと浮かんで思い出した。不可解な夢ではあるが、なぜかセピア色の海の情景がどこかで見たようななつかしい心持ちがするんだったので、これが初夢ということでよかろうと思う。
去年のさいごの一冊は三島由紀夫のはずだったが、妊娠小説が大晦日の夜にすべりこんだ。これもブックオフで¥105。鎌倉にいって、奥の和室で息子を寝かしつけたあとで紅白歌合戦の鬼気迫るユーミンをみていたら泣き声がして、どうにも興奮して眠りが浅いようだったのでテレビはよしてそのまま隣のキッチンで読み残していた数ページをぺらぺら読んだ。望まない妊娠を扱った小説にかんする評論だったが、たいしておもしろいと思えないでおわった。童貞小説集はものすごかったが、あっちは評論ではなくアンソロジーだったもんなあ。