まみ めも

つむじまがりといわれます

100万回生きたねこ

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)
急にひらめいたもんだから三連休は一泊二日の旅にでた。出発前夜に予約した旅館は、ちんまりとした八畳の部屋で、部屋で食事をとるプランをえらんだら、それは到着のときにもう床が用意してあるプランであったので、ついたなりに机がわきに寄せられてあり、また、のべてある床の枕にはちぢれ毛が一本おちていた。わきに寄せられた机で至極あっさりとした夕餉をとり、風呂におりたが、夫氏にまかした息子は脱衣場にてすでにカーチャンカーチャンと泣いており、隣り合わせた男湯から女湯の湯殿にまでカーチャンと呼ぶ声が届いているもんだからおろおろしながら湯に浸かった。そのうち声はやんだが、温泉にはとても浸かれなかったらしく、夫氏はからだを冷え切らしていたので、息子をあずかって風呂にいってもらった。息子は興奮したのか十一時をまわってもきときとと目を覚ましており、寝付いたあともやたらと目を覚ましてぐずるのだった。となりで寝ていたわたしも煎餅蒲団のせいか妊娠すると痛み出す股関節がみしみしして寝ていられなくなり、朝方にひっそり起き出して朝風呂をやった。風呂は三人も入れば脚が伸びないような湯ぶねだったが、一度もよその人と一緒にならなかったし、ひとり前には十分なもんだったし、なにより朝風呂があんまり久しぶりで気持ちよかった。部屋にもどったら丁度息子が目を覚ましカーチャンをやりだしたところで、それをまた寝かしてから、わきの板間で文庫本を読んでいたら朝のつめたい空気で湯上りのほてった身体もあっというまに冷えてしまった。その日は夫氏の友人に会ったが、彼のやっている畑に連れてってもらい、大根や人参を引っこ抜いたのが愉快だった。息子はキョトンとした顔をしていたが、引っこ抜いたあとの人参をなかなか離さなかったところをみるとよほどたのしかったと見える。
今年はじめて読み終えた一冊は夫氏の友人が息子にくれた絵本だった。佐野洋子。息子をソファのわきに座らせて、はじめは息子が音読のスピードよりはやく頁を繰るので目だけで文字を読んで、そのあとで声にだして読み聞かせでやったが、ことばを口にだして読み聞かせたときに最後でジュワッと涙が出ちゃった。ことばを音にするっていうのは、やっぱりひとつのエネルギーなんだなあと実感する。佐野洋子は三回ぐらい結婚してたとおもうが、三回とも本気なんだったら、もう何回でんぐり返りしたって生き返らないだろう。