まみ めも

つむじまがりといわれます

君は大丈夫か

君は大丈夫か―ZEROより愛をこめて (ちくま文庫)
産後は文字を読んではいけないと、いうが、ねむるのが下手で寝ようねようとするのがかえってストレスになって眠れない。だから、なんとなくねむたくなりそうな本を入院用にえらんだのを、ピンクのベッドに寝そべりながら読んでみる。君は大丈夫かというタイトルに、大丈夫ではありませんと即答してしまいそうになるのをぐっと我慢。ブックオフオンラインで百円。筑摩書房の退屈そうな表情のくまのしおりと一緒に、戸田書店とかいたローソクや花瓶の絵を配したしおりが挟まっているのがちょっとうれしい。古本を買うよろこびは、まえに読んだひとの痕跡をみつけることにもあるとおもう。新潮文庫のスピンをわざと根元で切り落としてあったり、読みはじめと読み終わりの日時をしるしてあったり、ファーストフードのレシート、みたことない市街局番の電話番号のメモ。やたら頁の端が折れているなあとおもっていたら、ドッグイヤーだったこともあった。どこのだれが読んだものなのか、探偵気分でググると、戸田書店は、静岡を中心に展開する書店チェーンで、しおりのイラストは花森安治のものらしい。君は大丈夫かというこの本はもと暮しの手帖に連載されていたものとのことで、花森安治とのめぐり合わせにテンションがほんのすこし、定期預金の金利ぐらいささやかに上昇。

「世の中はいろんな立場、いろんな考え方が入り混じって、とても複雑にできてるんだ。その中を君は生きて行かねばならぬ、やっと君は山道にさしかかったんだ。その道のりを苦しいと思うか、楽しいとみるかも、自分の感じ方次第だ。」―悩み多き年頃を迎えた少年への44の手紙を通じて語られる若者への熱いメッセージ。

1989年、アンノ氏63歳のときに刊行されたのを、二十年近く経て2008年に文庫化したらしい。副題はZEROより愛をこめて、となっていて、文中ではアンノ氏がZEROと名乗って若者たちに語りかけている。ZEROより愛をこめて、だなんて、アンノ氏も二十年まえはなかなか気障なことをいうもんだなあと意外に感じていたら、あとがきできちんと二十年まえのアンノ氏が自分でつっこんでいて微笑ましい。はたちのときに「老いたる光雅へ」と自分宛の手紙を書いていたノートをみつけて、腹立たしくて破り捨てたというエピソードがよかったなあ。本文よりもあとがきのほうがたのしかった気がするが、終わりよければということなのですべてよかったということで一件落着。