混雑したエレベーターのなかで、となりの先輩が、前の女の人の肩に止まっている小さな虫をみつけて、あ、と声をあげた。先輩は、みんなが振り返るときには、そのちいさな虫をつまみあげていたが、それを横から眺めていた同期の男の子が、その虫、くさいっすよ、と言った。彼によると、名前もずばりクサムシというらしく、「洗ってもやばいかも」。目的の階について、窓をあけて、虫をリリース、指先のにおいをくんくんして、くさっ、と先輩は仰け反ったが、わたしは鼻づまりでなんも分からんかった。ちなみに、その同期はイケメンの呼び声高い男子なのだが、いかんせんイケメン受容体が正常でないらしいわたしにはなんということもなかったが、今回、なんでそんな虫知ってんのときいたときに、ぶっきらぼうに、虫が好きなんだよと照れ臭そうにしたのはよかった。そのあとで、くさくなった指先に思いを巡らし、触れたものににおいがうつって残っていくというのを思ったら、ちょっとときめいた。
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 発売日: 2004/12/29
- メディア: DVD
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