まみ めも

つむじまがりといわれます

ジョンとメリー

金曜の朝はいつもより三十分はやく家を出たので、ちょうど日本代表の試合が始まるころに駅についた。乗り換え駅で、道ゆくひとのスマホ画面にうつる緑の芝がときどき目に飛び込んでくる。日本が点をとったのか、どんな試合をしているのか、そういう人たちの表情から分からんかとじっと眺めてみたが、よくわからず、そのまま会社でひと仕事終えてから結果だけみたらドローだった。

「玉子ふわふわ」で誰かがジョンとメリーについて書いていて、図書館で予約。本の表紙の男女のポートレートはいただけない。男の顔がとりあえず好みではない。先入観を植え付けるという意味で、本の登場人物を型にはめてしまうような写真や絵はないほうがいいと思う。気に入らない感じをもったまま読みはじめたら、いよいよ気に入らないタイプの男が描写されており、うんざりした。友人のパーティーで知り合った男女(ジョンとメリー)のワン・ナイト・ラブの翌朝からその夕方までに変遷するふたりの思いをそれぞれ綴った話だけれど、とにかくジョンは神経質でいちいちうるさい。メリーとの関係も主導権を取りたいが結婚とか迫られてややこしいのも困るという具合に駆け引きするしょうもない男なんで、読んでいていらいらする。メリーが朝食の片付けをしていて、グラスか皿を割ってしまったとき、「満足にできないならやらないほうがまし」みたいな嫌味をいったときは飛び出していって文句いってやりたいと思った。それなのにメリーはなぜかどんどん男にひかれていく。こんな男のどこがいいのかとキーキーしながら読んだ。

今になって、私は、自分が女を愛したことが一度もなかったことを、はっきりと知った。しかし、今回だけはまちがいない、今度は特別なのだ。

かくしてふたりはジョン・アンド・メリーからジョンアンドメリーになるのだが、その「今度だけ」は次もその次も何度でも更新されるのをわたしは知っている。だって、いままで、男と別れて、そのあと新しい恋がなかったこと、ないもん。
「いつまでも、いつまでも。神かけて誓う。ぼくの約束だ。きみの約束でもある」
「なにがおかしいんだ?」「あなた。わたし。わたしたち。すべて」
そしてふたりの恋は昇天する。わたしだけが地に足をつけて、どうせすぐ別れるもん、と不機嫌に本を閉じた。