まみ めも

つむじまがりといわれます

飛ぶ教室

そのうえ痔になった。産後のからだのしんどさはなかなかのもので、こどもの見送りで庭先のアスファルトのうえを歩くだけで足腰が重くなり傷口がしくしくし出す。予定日を過ぎても吐いたのはやっぱりつわりだったようで、うまれた途端になんでもいくらでも食べられるようになり、たまりにたまった食い意地があらゆるうっぷんを晴らさんばかりにさく裂している。きょうはひつまぶしをおかわりして饅頭を食べた。
うまれて7日めの夜に名前がきまった。「ふみ」にきまったよ、とこどもたちに伝えると、セイちゃんがノートの切れ端に「せいぞう」「ふくぞう」「ふみ」とならべて書いて、あとから「ふみ」のうしろに「ゃちん」とつけたした。「ゃ」を消しゴムで消して、ちとんの間に書き直して、ふみちゃんの出来上がり。フクちゃんも、あかちゃんのお名前を書きたいといって、おかあさんと一緒に鉛筆を握って「ふみ」と書いた。これまであかちゃんのitだった子が固有名詞をもって、すこし輪郭がはっきりするようで、うれしくなって何度も名前を呼んで輪郭をなぞる。

飛ぶ教室 (講談社青い鳥文庫)

飛ぶ教室 (講談社青い鳥文庫)

ブックオフオンラインで108円。入院中のベッドの上、退院後には布団の上で。阿川佐和子が小学校の図書館ではたらいていたときに、小学生からおすすめの本を問われて「飛ぶ教室」をすすめまくった、というのをなにかで読んだ。「旅先でビール」には廃棄処分になった列車を住まいにしている禁煙さんのことが書いてあった。寄宿舎生活を送る16歳の少年たちのクリスマスの物語。ひとりひとりが生き生きと描かれ、苦悩もよろこびも悲しみも、胸いっぱいで、ときどき気持ちがあふれそうになったときには、正義先生や禁煙さんが受け止めてくれる。

ぼくはあのばかげた客車の中に住んで、まったく満足しているんだ。春になればまた花がさくし、たいした金もぼくはいらない。ぼくのすごしたこの数年を、きみはむだな時と考えているが、読書と思索に、これほどゆたかな時間を持ったことは、ぼくはいままでにないのだ。あのときぼくがあじわった不幸には、それなりの意味がちゃんとあったのさ。ぼくみたいな変わり者も、すこしはいなくちゃいけないのだよ。