まみ めも

つむじまがりといわれます

洋食セーヌ軒

年末、父の肺に影がみつかり、きのうが手術だった。詳しいことを知りたいような気がしながら、なんとなく知りづらく、こういうときに物理的な距離というのはもどかしいもので、冷たい北陸の空の下、手術台で父の体にメスが入るところを何度も思い描いてうろたえ、半日吐き気を感じながら過ごした。母はどんなに心細いだろうと思うとたまらない。夕食の支度をしていたら、兄から無事に手術がおわったと連絡があり、ほっとする。夕飯はいなりずし、コーンと卵の中華スープ、春雨サラダ、スモークサーモンのマリネ。胃のもやもやが取れないので早々に布団にもぐりこむ。

洋食セーヌ軒

洋食セーヌ軒

予約してあったト本。

17の忘れえぬ料理、追憶の日々―直木賞作家の洗練された筆致が、極上の美味と人生の機微を紡ぐ掌編集。
ホーム・サイズの鱒
中華街の小さな店

プチ・シモオヌ
アルミの箸
鮎の宿
菊黄蟹肥
ことしの牡丹
エル・ジョロン

洋食セーヌ軒
オムレツ
欅の木
天ぷらの味
どこかで見たシェフ
春愁の町
雲の峰

「冬の本」で大竹聡が「神吉拓郎の描く冬は、酒場で、いい話を聞いているときのように、温かいのである」と書いていて、酒場でいい話をきくかわりに本のページをめくる。サザエさんでも見たようなおさまりのよい話。向田邦子がおかあさんの作るお惣菜なら、神吉拓郎は町のレストランで、ちょっとよそゆき。どっちもいい匂いが鼻先をくすぐる。